『世界の昔話』と聞いて、あなたは何のお話を思い浮かべますか?
大好きなお話がたくさんあって、迷いに迷いましたが、今回は、ぜひ読んでおきたい有名どころから、イソップ物語、グリム童話、アンデルセンを中心に選んでみました。
勇気、希望、生きる力…
絵本から学べる教訓はたくさんあります。
大人でも楽しめる、原作に近い絵本も選びましたので、まだご覧になっていない方は、ぜひ一度、読んでみてくださいね。
ウサギとカメ
ある日、ウサギがカメに言いました。
「ねぇ、かけっこして、どっちが早いか確かめようよ。ボク、負けないぞ!」
「そうだねぇ。じゃあ、競争してみようか。ぼくだって、負けないよぉ」
カメは、のんびりとうなずきました。
ようい… どんっ!
さぁ、ウサギとカメのかけっこの始まりです!
ゴールの丘に先にたどり着けるのは、一体どちらでしょうか?
- 5歳~
- 楽しいリズム絵本が好きな子に
まずは、イソップ童話から一冊。
有名な『ウサギとカメ』のお話です。
さて、突然ですが、問題です!
『ウサギとカメ』のお話から得られる教訓は、一体何でしょうか?
私は『カメ=頑張り続ければ、最後には勝つことが出来る時もあるから、どんな時もくじけずに頑張って!ウサギ=おごりたかぶって油断すると、弱い者にも負けてしまう』だと思っていました。
実際、これがメジャーな感想でしょうし、イソップさんが伝えたかったことだと思います。
しかし、この絵本は、違うのです。
この絵本が伝えたいことは
『人は人。自分は、自分。』
ということなのではないでしょうか。
ウサギは、確かに最初は、カメに勝っていばることを考えていました。
たしろさんのイラストも、ウサギのスタートダッシュを臨場感たっぷりに描き出しています。
でもウサギは、途中で、美味しそうな人参畑を見つけました。
お腹いっぱい食べて、いい気持ちで眠ってしまいます。
その幸せそうな顔ったら。
見ているこっちまで幸せな気持ちになってきます。
その間にカメに追い越されてしまうのですが、カメがゴールしたのを見た時も、悔しさはあまり伝わってきません。
「てへへ、やっちゃった♪」
と、頭をぽりぽり。
カメに勝負を挑んだ時とは一転して、とても大らかなウサギさんになっていました。
よほど美味しい人参だったのでしょう。カメに勝つことよりも、そちらのほうが嬉しかったようです。
一方のカメは、原作通り、頑張ってレースに望んでいます。
ただし『のろおり てくてく』。
カメはカメで、心からレースを楽しんでいたようです。
その証拠に、ウサギを打ち負かしたあとも、有頂天になって喜んだり、いばったり、なんて、ちっともしません。
レース後は、握手を交わして互いの健闘を称え合い、仲良くリンゴを食べて、おしまい。
どうやら、最初から、ライバルではなく、親友だったみたいですね。
よく見ると、イラストでは、ウサギとカメ以外にも色々な動物が描かれています。
ほのぼのと、ウサギとカメのかけっこを見守っています。
この『ほのぼのと子どもたちを見守ってあげること』が、子育て中のお母さん方や、地域社会にとって、大切な視点なのではないでしょうか。
この絵本が出版されたのは、2010年。
ちょうど『子どもは、愛情の中で、のびのびと感性豊かに育てましょう。あまり干渉しすぎないように』という教育観がうたわれ始めた頃です。
その3年後には、本格的に『ゆとり教育』がスタートしました。
『ゆとり教育』には賛否両論ありますよね。
現在では、『ゆとり』どころか、『早期教育』が推奨されています。
英語などは、その最たるもの。
小学校高学年からゆっくり慣れ親しんでいたものが、小学校中学年からに早められてしまいました。
ただでさえ、子育て中は
「早く、早く!」
と言いたくなるのに、文部省がそういう教育方針だと、余計に焦って
「あの子は、もうとっくに出来ているのに、どうしてうちの子は出来ないの?」
と、よそのお子さんと比べて、我が子が心配になってしまいますよね。
でも『人は、人。他人は、他人』です。
この絵本を読んで
「エリートコースに乗って生き急ぐことよりも、自分が本当に興味があって打ち込めるものを見つけて、自分のペースで楽しく取り組むことの方が、生き生きと充実した人生が送れるのでは?」
ということを、改めて考えさせられました。
マンガやゲームに夢中になっている子を見ると、
つい「宿題したの?」と言いたくなってしまいますよね。
でも、ゲームが好きな子は、プログラマーなど、ゲームの制作に携わる人に。
マンガが好きな子は、漫画家や、イラストレーター、作家、声優などに。
『好きなこと』を夢中で追いかけていたら、その先には、さまざまな未来が持っているのかもしれませんよ。
お子さんに読み聞かせた後に、
思わず「うーん…」と考えさせられてしまう、
不思議な魅力を持っている、この絵本。
幼いお子さんを持つご両親にも、ぜひ読んでほしい一冊です。
ほんわかした雰囲気に、心がほっと和みますよ。
イソップのライオンとねずみ
こかげでお昼寝をしていた子どものライオンの足に、うっかり、誰かが飛び乗ってしまいました。
ライオンは思わずうなりましたが、見ると、ちっぽけなネズミです。
「なんだ、ちびねずみじゃないか。
何もしやしないから、どこへでも、さっさと走っておいきよ。」
「起こしてしまってすみません。
もし私の助けがいる時には、いつでも呼んで下さい。
すぐにやってきますから。」
「お前が、僕を助けるだって?」
ネズミの言葉を、大声で笑い飛ばしたライオンでしたが…
ちっちゃくっても、実はすごい!
優しいライオンと、勇敢なネズミに、友情が芽生えるまでの、心温まる物語です。
- 小学校低学年~
- 動物が好きで、物事をじっくり考えることができる子に
2冊めのイソップ物語は『ライオンとねずみ』です。
絵本の帯には
『寓話の父、イソップの、代表的なたとえ話』
と書いてありましたが…
すみません。
実は私は、初めてこのお話を読みました。
みなさんは、ご存知でしたでしょうか?
バーナデット・ワッツさんの『ライオンとねずみ』は、まず、文章がすごい。
一度読み始めたら、ぐいぐいと物語に引き込まれ、一気に読んでしまいたくなります。
その後で改めて見返すと、温かいイラストが、実に細かく描写されていること…
動物たちの表情も実に生き生きとしていて味わい深く、1ページ、1ページ、最初からじっくり眺めたくなります。
まさに、1冊で2度美味しい絵本です。
助けを求めて泣き叫ぶライオン。
他の動物が何も出来ないでいる中、助けてくれたのは、笑い飛ばして鼻にもかけなかったネズミでした。
バカにされてもなお、ライオンへの恩をずっと忘れずに、勇敢に助けようとするネズミのけなげさが素敵です。
また、ネズミに心から感謝して、友達として大切に思うライオンの素直な心も素敵ですね。
読んでいるこちらの心まで、ぽかぽかにしてくれますよ。
誰だって、神様から一つずつ、なにか特別なギフトを授かってこの世に舞い降りてきます。
「あいつは、自分より弱い」
と見下したりしないで、みんなに優しく接しましょうね。
道徳的な教えですが、説教っぽくならずに、でも、しっかりと伝えられる絵本ですよ。
おおかみと7ひきのこやぎ
「おかあさんだよ。あけておくれ。」
ノックの音とともに、響く声。
お留守番を頼まれた子ヤギ達は、お母さんが言ったことをきちんと覚えていて、オオカミだと見抜きます。
それでも、オオカミはあきらめません。
賢い子ヤギ達vsはらぺこオオカミの、ハラハラドキドキの、熱いバトル!
子ヤギ達は、お母さんが帰ってくるまで無事にお留守番出来るでしょうか?
- 5歳~
- 正義感の強い子や、ドキドキするお話が好きな子に
お次は、グリム童話の絵本をご紹介します。
まずは『おおかみと7ひきのこやぎ』。
子どもたちにとって『おるすばん』だけでも怖いのに、お留守番中に恐ろしいオオカミが来る、というから、たまりません。
一生懸命に戦いましたが、オオカミの悪知恵の方が一歩上。
お母さんヤギが戻った時には、可哀想に、末っ子のヤギ以外はオオカミに飲み込まれてしまっていました。
そこでお母さんは、満腹になって眠っているオオカミのお腹を、ハサミでジョキジョキッ!
原作では、助かった子どもたちは、小躍りして喜びます。
ラストも含め、このあたりの描写が、今の子供たちに読み聞かせするには残酷すぎる、と言う方がいらっしゃいます。
そこでご紹介したいのが、こちらの、いもとようこさんの絵本。
さすがに小躍りするシーンは省かれていましたが、そのほかは原作に忠実です。
でも、ほんわかしたイラストや、短くまとまった文章のおかげで、実にユーモラスに描かれていますよ。
この物語には
「子ヤギたちみたいに、頑張ってお留守番しよう!」
という応援のメッセージも込められていると思います。
お留守番をすることに慣れてきたくらいの子ども達に、ぜひ読み聞かせしてあげたい絵本ですね。
(怖いお話が嫌いな子や、はじめてお留守番をする子には、刺激が強すぎるかも知れませんので、ご注意を。)
白雪姫
「鏡よ、鏡。かべの鏡。この国で一番美しいのは誰?」
美しさが自慢のおきさき様は、魔法の鏡に自分の姿を映しては、たずねます。
「おきさきさま、この国で一番美しいのはあなたです。」
魔法の鏡にこう言ってもらえると、ほっと安心出来るのでした。
ところが…
ある日、鏡はこう言ったのです。
「おきさきさま、ここで一番美しいのはあなたです。
でも白雪姫は、あなたの千倍も美しい。」
なんということでしょう。
自分よりも、義理の娘の方が美しい、なんて!
おきさきさまは驚きと悔しさで、はらわたが煮えくり返りそうになりました。
そうして、おきさきさまは、狩人を呼んで言いました。
「白雪姫を森へ連れて行って、殺しておしまい。
そして、そのしるしに、あの子の肺と肝を持ってかえるんだよ!」
狩人は命じられたとおりに殺そうとしましたが、泣き出した白雪姫を見て可哀想になりました。
そして、白雪姫を逃がす代わりに、イノシシの子の肺と肝を持って帰りました。
おきさき様はそれをゆでさせると…
なんと、食べてしまったのです!
白雪姫に迫りくる、継母の、数々の魔の手!
白雪姫は無事に逃れることが出来るでしょうか!?
- 小学校高学年~大人向け
- 怖い話が好きな方や、『しらゆきひめ』の原作を読んでみたい方へ
※原作ならではの怖い描写や気持ち悪い描写が多分に含まれています。
心臓の弱い方や、ディズニーのほのぼのとした『しらゆきひめ』が好きな方は、十分にご注意下さい。
2冊めにご紹介するグリム童話の絵本は、『白雪姫』の原作です。
原作の『白雪姫』は、ホラー好きの私からしても、身の毛がよだつほど恐ろしいお話でした。
さすが、『本当は恐ろしいグリム童話』という本が出るだけのことはありますね。
白雪姫の描写にしても
『雪のように白く』までは分かるけれど
『ほほは血のように赤く…』って。
りんごのように、とか、赤くて可愛らしいものなら他にいくらでもあるのに、のっけからホラー感満載です。
継母も、白雪姫を森に捨てて、毒りんごを食べさせただけだと思っていたのですが、そんな程度の恐ろしさではありません。
実際はイノシシの肉でしたが、シンデレラの…
つまり、人の肉を食べてしまうなんて、狂気の沙汰です。
その後も、魔法の鏡に
「あなたが一番美しい」
と言ってもらいたい、その一心のみでシンデレラを憎み、次々と抹殺計画を企てていきます。
王子様とめでたく結ばれたシンデレラは、結婚式に継母も呼びます。
そこで継母に、どんでん返しの仕返しをするのですが、それもまた、まるで拷問のような辛辣さです。
それでも、私があえてこの絵本をおすすめする理由は、2つあります。
まずはじめに、白雪姫が小人の家を訪れたシーンが、とても印象的だからです。
森の中を逃げ惑ってお腹がぺこぺこの白雪姫は、7枚のお皿から、少しずつ野菜とパンをとって食べ、7つのコップから一口ずつぶどう酒を飲みました。
一人の人から全部とっては悪いと思ったからです。
帰ってきたこびと達は眠っているきれいな白雪姫を見て、そのまま寝かせておくことにしました。
そして、「ベッドで眠れないのは誰かを争う」なんてことはせず、1時間ずつ交代でベッドを使いました。
お互いを思いやる、優しい気持ち。
なんと平和で温かいシーンでしょう。
白雪姫を憎く思うがあまりに、どんどん心がすさんで醜くなっていく継母の姿が、一層、このシーンの素晴らしさを引き立てていると思います。
2つめの理由は、幼い頃からずっと抱いていた謎が、原作を読んでようやく解けたからです。
その謎とは…
『目を覚ました白雪姫は、なぜ王子様を好きになったのか』
ということです。
一目惚れするほどハンサムだったのでしょうか?
でも、そんな描写はどこにもありませんよね。
原作にもありませんでした。
しかし、原作に描かれていた想像以上にひどい白雪姫の境遇を知って、ようやく思い至ったのです。
幼い頃に母と死別し、継母からは何度も命の危機にさらされるほどの虐待を受けてきた白雪姫。
継母の言う通り、自分なんて、いない方がいいのではないか。
でも、殺されるのは恐ろしい…
お姫様なので、本当は家事なんてしなくていいのに、こびとたちの家にいるためには、家事を手伝わなければいけません。
優しいこびと達の家で暮らしている間も、白雪姫は、ずっと心の中で葛藤していたのではないでしょうか。
そんな白雪姫にとって
「世界中で一番君が好きさ。」
自分の存在価値をストレートに認めてくれる、王子様のこの言葉ほど、嬉しいものはありませんよね。
今まで不幸のどん底にいた分、どうか結婚後は幸せな人生を送れますように。
そう祈らずにはいられませんでした。
『いつまでも美しくありたい』というのは、世界中の女性の願いだと思います。
では、美しさとは何でしょうか?
外見だけが美しければ美しい?
そんなはずは、ありませんよね。
この絵本を読むと、『本当の美しさ』について、改めて深く考えさせられます。
はだかの王さま
「この世で誰も持っていないような、珍しい服がほしい」
おめしかえ(お洋服を着替えること)が何よりも好きな王さまが出した、無理難題な注文。
靴下や手袋も合わせると、もうすでに100万枚もお洋服を持っているのに、全部飽きてしまったんですって。
さぁ、家来たちは困りました。
何日も、何日も国中を探し回りましたが、世にも珍しい服、なんて、そう簡単に見つかるものではありません。
どこから噂を聞きつけたのか、それに目をつけた二人の悪い男がおりました。
「私達は、この国一番のはたおり名人。
珍しい布を織らせたら、私達の右に出るものはいません。」
「それは一体、どんな布なんだね?」
「王さま、よくぞ聞いてくださいました。
私達の布は、おろかものには絶対に見ることが出来ない、世にも不思議な布でございます。」
賢い人にしか見えない布…
そんなもの、本当に作れるのでしょうか?
しかも王さまは、それを着て、街の中をパレードする、なんておっしゃるのです!
一体、どうなってしまうのでしょうねぇ?
- 小学校低学年~
- 面白いお話の好きな子に
今度は、アンデルセンの絵本をご紹介します。
まずは、『はだかの王さま』。
このお話は、図書館の幼児向けの劇で見て、うちの5歳の娘がとても気に入ったお話です。
その劇の中では、正直な子どもが嘘だとバラして、みんなではやしたてる所で終わってしまったようで
「その後、どうなったの?」
と、とても興味を持っていたので、読み聞かせをしてみました。
嘘をついた二人の男はもちろん、恥をかかせた子どもにも腹を立てて、罰を与えたのかと思いきや…
意外な展開にびっくり!
しかし、今回改めて調べてみて、そこは、再話者の中井貴恵さんのオリジナルだったことが分かりました。
原作では
『嘘だと分かったけど、後悔先に立たず。
予定通り、パレードを無理やり続けて、とんだ恥をかいてしまった。』
で終わっていました。
つまり、娘が見た劇の通りだった、ということですね。
ただ、やっぱり、現代人の私達からすると、ちょっと伝わりにくいのでは、という感じがいなめません。
「あの子どもはどうなったの?」
という疑問が、最後まで消えずに、もやっとしてしまうのです。
その点、こちらの絵本では、後日談までしっかり描いてあり
「こんな結末だったらいいのになぁ。」
とほのぼのと思わせるような、素敵なラストでした。
ラストは違えど、こちらの絵本でも
「欲張りすぎちゃダメだよ。」
「正直でいなきゃダメだよ。」
という教訓は、しっかりと伝わってきます。
また、Colobockleさんの、色彩豊かでユニークなイラストが、お話の面白さと、ラストのほのぼのとした雰囲気を、より一層引き立てていますよ。
普段、原作にこだわる私ですが、こちらの『はだかのおうさま』は、納得出来る絵本でした。
文章量がかなり多いので、何回か出てくる
『トンカラ トンカラ トントントン
おろかものには ぜったいみえない 金のおりもの ふしぎなおりもの…』
のところは、ラップ調で読み聞かせてみてはいかがでしょうか?
印象深いリズム絵本となって、子どもたちが面白がって聞いてくれますよ。
(面白いメロディーを作曲できる人なら、なお素敵な読み聞かせが出来るでしょう。
私も聞いてみたいです。)
みにくいあひるの子
ある夏の日のことです。
あひるのお母さんは古いお屋敷のお堀の中で卵を温めていました。
「さぁ、早く出ておいで。」
お母さんの呼びかけに応えて、次々に黄色くて可愛いひな達が産まれてきました。
ところが…
一つだけ、まだかえらない卵がありました。
とりわけ大きい卵です。
「こりゃ、きっと、七面鳥の卵だよ。」
「そんな卵は、ほっといたらいいのさ。」
年寄り達は言いましたが、お母さんは首を横に振りました。
「でも私、もう少しあたためます。」
しかし、待望の赤ちゃんは、灰色で、とても醜い大きなひなでした。
他のあひる達はもっと騒ぎ立て、みにくいあひるの子は、あひるえんのお友達や、兄弟たちからもいじめられました。
そして、ずっとかばい続けてくれていたお母さんさえ、とうとう味方ではなくなってしまったのです。
「お前が、遠い所へ行ってくれればいいのに。」
お母さんの言葉を聞いて、みにくいあひるの子は悲しくなり、走って、走って、走り続けました。
みにくいあひるの子に待ち受ける、数々の困難。
居心地のなさ。
そんな中でも、みにくいあひるの子は
「もっと広い世界へ出て、水の上を泳ぎたい。」
という夢を抱きます。
そして、ある秋の日、とうとう憧れの存在を見つけました!
それは、夕暮れの中を飛んでいく、白鳥の群れ。
白鳥になりたい。
でも、自分みたいにみにくい者が近づいたら、きっと殺されてしまう…
(でも、あの鳥たちになら、殺されたってかまわないさ!)
みにくいあひるの子が、逆境にもめげずに力強く生き抜いていく、感動の冒険物語です。
- 小学校中学年~大人向け
- いじめの問題などの人間関係や、社会的問題・病気など、様々なことで悩み苦しんでいる方に
2冊目のアンデルセンの絵本は、比較的原作に近いお話です。
自分たちと同じじゃなければ認めない、周囲の冷たさ。
卵の頃からずっとかばっていたお母さんでさえ、次第にかばいきれなくなっていきます。
まるでいじめの構図と一緒だな、と思いました。
『あの子を守りたい。
でも、守ろうとすると、自分までいじめられてしまうかも…』
恐怖を抱き、やがて傍観者になっていく周囲の子たちの苦悩です。
(実物を見ると、白鳥のひなだって、色が違うだけで、可愛いです。
泳ぎ方は、すらっと真っ直ぐに水の上に出ていて、あひるよりもよほど上手。
原作では描かれているこの描写がないことが、少し残念です。)
みにくいあひるの子は周囲から迫害を受けながらも、必死に自分探しの旅を続けます。
この絵本にも書いてありますが、『みにくいあひるの子』は、アンデルセンの自叙伝だった、という説があります。
アンデルセンは、貧しい靴屋の家に産まれました。
寝室はなく、一家全員、同じところで寝なければいけません。
22歳の若い父親は持病を持っており、アンデルセンが11歳の時に亡くなってしまいます。
学校を中退したアンデルセンはオペラ歌手を目指して、15歳の時にコペンハーゲンに行きました。しかし、貧しさにあえぎ、才能も全く認めてもらえず、オペラ歌手の夢は閉ざされてしまいました。
(なので、アンデルセンが書いた童話の初期のものは、『マッチ売りの少女』など、死ぬことでしか幸せになれない貧困層の切実な訴えと、我関せずで無情にも通り過ぎていく富裕層に対する訴えを描いたものが多いです。)
アンデルセンは、17歳の時に、デンマークの王様や、政治家のヨナス・コリンの援助を受け、ようやく教育を受けさせてもらうことができました。
しかし、5年間の学校生活は、彼にとって、とても悲惨なものでした。
文学的才能は開花しないどころか、学長にからかわれてしまう始末です。それでもコリンはあきらめず、個人授業まで受けさせてくれました。
そのかいがあって、アンデルセンは23歳の時に、大学に入学することが出来ました。彼はそこで、文献学と哲学を学びました。
そうして、ようやく文学的才能が花開きます。
翌年に自費出版した本は、ドイツ語版も出るほど高い評価を得ることが出来ました。
その後、アンデルセンは、28歳の時に、1年以上かけてヨーロッパを旅して回りました。
「もっと広い世界を見たい」
まさしく、みにくいあひるの子と一緒ですね。
―どんなに貧しくても、バカにされても、常に夢を持ち続ける―
言葉で言うのは簡単ですが、実際に行うには、並々ならぬ努力と根性が必要ですよね。
みにくいあひるの子とは違い、どんなに努力してもかなわない夢もあります。
『みにくいあひるの子』は
「どんな時でもあきらめずに希望を持ち続けてほしい」
というアンデルセンからの熱いエールが詰まったお話だと思います。
今現在、つらい立場に置かれている人ほど、『みにくいあひるの子』のお話は胸にしみて涙を誘います。
そして、きっと、明日への希望と、また一歩踏み出していく勇気を与えてくれることでしょう。
人生とは、『一生をかけて自分探しをする旅』なのかもしれませんね。
The Three Little Pigs 『3びきのこぶた』
「大きくなったから、一人で家をたてなさい」
ある日、お母さんブタが3匹のこぶたたちに言いました。
こぶたたちは、それぞれ工夫をして家を作ります。
けれども、こぶた達を食べてしまおうと、密かに狙うものがいました。
オオカミです!
3びきのこぶたたちと、オオカミの、命がけのバトル!
果たしてこぶたたちは、無事に生き抜くことが出来るでしょうか?
- 3歳~
- スリリングな物語が好きな子に
このお話は、西洋の民話です。
英語で書かれたお話は、やっぱり、英語で読むのが一番!
ということで、日本の昔話の絵本を紹介したときにも同シリーズをご紹介しましたが、改めてご紹介いたします。
実は原作では、『成長したから』ではなく、『貧しくて育てきれないから』こぶたたちはお母さんぶたに自立するよう促されます。
そして、一匹めのこぶたさんは、可哀想に食べられてしまいました。
三番目のこぶたは、仕返しに、煙突から侵入してきたオオカミを釜茹でにして食べてしまいます。
ブタは雑食、とは言え…ちょっと怖いお話ですね。
でも、現代版でも、教訓は同じです。
パパッと簡単に仕上げたものよりも、丹精を込めて仕上げたもののが、いざと言う時に役立ちます。
転じて、将来のために、何事も全力で取り組みましょう、という意味ですね。
小さい子のほうが耳が優れており、柔軟性のある物の捕らえ方が出来るので、英語も早く慣れ親しむことが出来ますよ。
まとめ!
『おおきなかぶ』(ロシア民話)、『てぶくろ』(ウクライナ民話)、『三びきのやぎのがらがらどん』(北欧民話・英語のCD付きのものもあります)などなど…
ここではご紹介しきれませんでしたが、世界には、子どもたちに読み聞かせしたい昔話や民話が、まだまだ、たくさんあります。
色々な絵本を読んで、お気に入りの絵本を1冊でも多く見つけてくださいね。
それらは子どもたちに様々な知恵を授け、生きる上で大いに役に立ってくれますよ。
また、大人になってから、子供の頃に大好きだった絵本をもう一度読み直すのもおすすめです。
心の引き出しにしまっていた大切な思い出が、一緒に蘇ってくることでしょう。