子どもに読み聞かせしたいおすすめの日本昔話の絵本を13冊紹介します。
また、なぜ子どもに絵本をおすすめしたいのか。
その思いについても語っています。
ぜひともご一読いただき、お子様への絵本選びの参考にしていただければ幸いです(^^)
昔話の絵本が子どもに与える影響
ある古文の大学教授がおっしゃいました。
「小さい頃に昔話をよく聞かせてもらった子どもは、違和感なく古文に親しむことが出来、圧倒的に高い点数が取れる」と。
とっさに「あっ、私も同じだ!」と思いました。
古文の授業の最初の単元は、『竹取物語』でした。
え?竹取物語?今さら?
そりゃ、大好きな昔話だったけれども…
この作品は、先の展開が読めてしまうほど子どもの頃に慣れ親しんだお話です。
あとは古語をちょびっと覚えるだけで、テストの準備はOK。その古語だって、英単語に比べたらはるかに覚えやすいと思いました。
みんなが古文に苦手意識を持ってしまうのが、不思議なくらい。
選択肢だって、間違えようがありません。
毎回、満点に近い点数が取れると、もう嬉しくて楽しくて仕方がなくなりました。
それというのも、母が、ほぼ毎晩、寝る前に布団の中で、昔話を含めて色々な絵本を読んでくれたおかげです。
その母が、戻ってきたテストの点数を見て喜んでくれたのが、なによりも嬉しかったですね。
もちろん、たくさん絵本を読んでもらえばもらうほど、読解力は上がりますから、古文ばかりではなく、現代文や漢文の成績も自信がありました。
国語のテストは最終的には
「テスト対策はそんなにしなくていいや。直感で答えが分かるし。」
と思ってしまっていたほどです。
(意識的に取り組んだのは、漢字の書き取りや、古語、動詞の活用形くらいでしょうか。)
国語の能力を鍛えるためには、そのくらい、幼い頃から昔話絵本を含めて、絵本をたくさん読み聞かせしてもらうことが大切だ、ということです。
『温故知新』とよく言いますが、昔を知っているからこそ、今の道徳的観念も、自分なりに「妥当かどうか」を判断することが出来ると思います。
最近は英語で昔話を読み聞かせることが出来る昔話絵本や、大人向けの昔話絵本が出ていて、面白いですよ。
ぜひ、あなたと、お子さんにも、昔話絵本の面白さを知ってほしい。
絵本のリストの幅を広げてほしい。
そう願って、私の引き出しの中から、いくつか昔話絵本を厳選してみました。
あなたはすべてのお話をご存知ですか?
きつねとたぬきのばけくらべ
むか~し、むかし。
こっちのお山のきつねが、向こうの山のたぬきに、とっても威張って、お手紙を書いたんだって。
『こら、たぬき。ばけくらべをしよう。すぐにおみやの前までやってこい』
お手紙を受け取ったたぬきは、びっくり仰天! 目をぱちくり。
きつねと、たぬきの、ばけくらべ。
さぁ、どっちが勝つのでしょうか?
キミは、どっちを応援したい?
- 2歳~(動物が好きな赤ちゃんや、読み手の工夫次第では、0歳から可能)
- はじめて昔話と出会うお子さんに
昔話絵本の読み聞かせは、何歳から始めたらいいのでしょうか?
昔話は独特の語り口で話しますから、幼稚園受験や小学校受験のことを考えると、早いうちに慣れ親しんだほうが得策ですよね。
とは言え、昔ながらの物や役職名も出てきますから、あまり小さいお子さんだと、そもそもストーリーを追えないんじゃ?
やっぱり5歳くらいからかなぁ?
…と、思いきや。
なんと!
赤ちゃん向けの昔話絵本があるんです!
それが、こちらの
『あかちゃんの むかしむかし』シリーズ。
その中でも最初の一冊としておすすめなのが
『きつねとたぬきのばけくらべ』です。
こちらの絵本は、小さいうちにぜひ伝えたい『優しくて美しい日本語』と、昔懐かしいイラストが、息ぴったりで、聞き手は違和感なく昔の世界にタイムスリップすることが出来ます。
たとえば
『きつねは きのはっぱを あたまに のせて』
の文章のページには、頭に木の葉っぱを乗せて得意そうにしているきつねが描いてあります。
『くるっ!』
の文章のページでは、本当にくるんと一回転しているきつねが。
(ここで、絵本自体を一回転させてあげると、本当にきつねのイラストが回っているように見えますよ。)
次のページをめくるタイミングに合わせて
『ぱっ!』
と読むと、変身したきつねのイラストが載っているので、まるでその場で変身したみたい。
臨場感たっぷりの絵本ですよ。
『幼い頃から昔話に慣れ親しんで、国語の力を身につけさせたい』という教育熱心なご両親にもおすすめですよ。
かえるをのんだととさん
タイトル部分では、縁側で美味しそうにおだんごを食べている、ととさん(お父さん)と、かかさん(お母さん)が描かれています。物語は、ここからスタート。
「かかさん、かかさん。腹が痛くてたまらん。どうしたらいいかのう」
ととさんが相談すると、かかさんは言いました。
「おしょうさまに、聞きなされ」
そこでととさんはお寺に行って、おしょうさまに相談しました。
「ととさん、ととさん。そりゃぁなぁ、腹の中に虫が居るせいじゃ。かえるを飲むと良いぞ」
ととさんは言われたとおりに、かえるをつかまえて、ぺろっと飲み込んだと。
するとかえるが腹の虫を食べてくれたので、腹痛が治りました。
でもなぁ―
今度は、かえるがお腹の中をぺたらくたら歩いて気持ちが悪くなってしまいました。
「かかさんやぁ。」
「おしょうさまに、聞きなされ」
あちらの具合が良くなると、こちらの具合が悪くなり…
おしょうさまに言われるがままに、いろんなものを次々に飲み込んでいくととさん。
飲み込むものは、どんどん大きくなっていき…
え?
そんなものまで、ぐわっと飲みこめちゃうの?
次々に難事件を解決しちゃうおしょうさまもすごいけど、ととさんって、一体何者!?
飲み込まれた者の結末を思うと可哀想だけど、奇想天外、愉快・痛快な昔話です。
- 読み聞かせをするなら3歳~
- 笑い話が大好きな方々に
自分で読むより、上手な読み手に読んでもらったほうが、面白さが倍増しますよ。老人ホームの読み聞かせ会でも、見やすいようにプロジェクターに絵を映せば、大ウケするかもしれませんね。
季節感のある昔話は、できる限り、その時期に読み聞かせしてあげましょう。生活とマッチした絵本の方が、より親近感を持って物語の世界に遊びに行けますよ。
ということで、まずは、2月。
節分の時期には、『かえるをのんだととさん』の絵本がおすすめです。
え?
なぜかって?
それは、見てのお楽しみ♪
軽快な文と、とってもユーモラスなイラストが絶妙なハーモニーを奏でて、大人も思わず笑っちゃう。
まるで落語を聞いているかのような、とっても楽しい絵本です。
難しいことは、とりあえず置いといて。
童心に帰って子供と一緒に思いっきり笑ったら、日頃のストレスも、おしょうさまがスッキリ解消してくれるかもしれませんよ。
子どもたちは、繰り返しのあるお話が大好き。
「くるぞ~、くるぞ~!」
と先が知りたくてたまらなくなるんです。
小学生向けの読み聞かせ会でこの絵本を読むのなら
「せーの、って言ったら、『おしょうさまに ききなされ』って大声で言ってね」
と前置きしてから読み始めてみてはいかがでしょうか。
参加型の絵本になるので、ノリの良い子どもたちなら、より一層絵本の世界にはまり込み、大ウケすること間違いなしです。
はなさかじいさん
ある日、おばあさんが川で洗濯をしていると…
黒塗りの立派な箱が流れてきて、中には真っ白な子犬が入っておりました。
「神様からの授かりものじゃ。」
二人は子犬をシロと名付け、それはそれは大切に育てました。
毎日たくさんエサをもらったシロは、ずんずん大きくなりました。
ある日のこと。
じいさまが山へ芝刈りに行こうとすると、シロが言いました。
「おらの背中に乗っとくれ。」
じいさまはびっくり仰天!
「何を言う。かわいいお前に乗れるものか。」
「いいから、いいから。」
シロはじいさまを背中に乗せると、ずんがずんが、山をのぼっていきました。
「ここだ、ここだ。ここほれ、ワンワン!」
シロが教えてくれたところを掘ると、なんとまぁ、大判・小判が、ざっくざく!
それを聞きつけた、隣の怠け者のじいさまとばあさま。
「このいぬころ、1日、貸しとくれ!」
嫌がるシロを、無理やりひっぱっていきました。
そして、となりのじいさまは、強引にシロの背中にまたがって偉そうに言いました。
「さぁ、山へ行け!宝のありかへ連れて行け!!」
おじいさんとシロの深い愛情と、となりのじいさまの目に余る悪行っぷり。
その対比がお子様でも分かりやすいように、きちんと描かれた、勧善懲悪ストーリーです。
- 5・6歳~
- 桜の花が大好きな子や、優しい子に
「桜の時期にぴったりの昔話は…?」
と聞かれたら、誰もがきっと、『はなさかじいさん』を思い浮かべるのではないでしょうか。
『はなさかじいさん』は、別名、『花咲か爺(じじい)』や『花咲かじい』とも言いますが、『日本五大昔話』の一つです。
日本人ならぜひ知っておきたい日本五大昔話には、他に、『桃太郎』、『舌切雀(すずめ)』、『かちかち山』、『さるかに合戦』があります。
ところで、こちらの『はなさかじいさん』。
♪裏の畑でポチが鳴く 正直じいさん 掘ったれば~
という『はなさかじいさん』の童謡になじみのある方にとっては
「え? 犬が、桃太郎の桃みたいに上流から流れてきた…
犬の背中に乗って、大丈夫なの?
というか、名前って、ポチじゃないの?」
と、ツッコミどころ満載の絵本に思えてしまうかもしれませんね(笑)
しかし、原話を読むと、実は、もともと犬には名前はないのです!
『はなさかじいさん』を語り継いでいく時に、子どもたちにより親しんでもらえるようにと、『シロ』と名付けられたこの白い犬。
明治時代に『はなさかじいさん』の童謡が作られる時は、当時、犬の名前としてはやっていた『ポチ』に名前が変わってしまった、というわけです。
こちらの絵本をおすすめする理由は、ずばり、シロとじいさまの心温まる交流が、拾われたときから細やかに描かれている点です。
隣のじいさまが同じ行動を真似しても正反対の結果になってしまうのは、そこに愛情があるかどうかの違いです。
白い犬(特に、白い秋田犬)は『神様からの使者』だと古くから伝えられてきました。
というのも、真っ白い秋田犬は産まれてくる確率が非常に低く、たとえ産まれてきても体が弱くて、成犬まで育て上げるのが大変難しいからです。
シロがじいさまを背中に乗せられるくらいの立派な犬に育ったことでも、じいさまとばあさまがどんなに大切に育てたのか、うかがい知ることが出来ますよね。
シロとじいさまの愛情と比べることによって
「隣のじいさまって、なんてひどい人だ。こんな人にはならないようにしよう。」
と、読んでもらったお子さんは、より深く実感してくれることでしょう。
次々と隣のじいさまにひどいことをされ、最後は殺されて灰になってもなお、互いを思いやり続ける、シロとじいさま。
そう思うと、二人の愛情が見事に開かせた、美しい桜の花が泣けてきます。
絵本を開けば、見開きいっぱいに描かれた優しい水彩画と、文章のあちらこちらに織り込まれた昔の言葉が、ほのぼのとした古(いにしえ)の香りを運んできてくれますよ。
「ずんがずんが、山をのぼっていった。」
「きんきん、きらきら、かがやいておる。」
など、昔ながらのオノマトペも、実に見事に、楽しく使われている絵本ですよ。
きんたろう
むか~し。
足柄山に、金太郎がおりました。
雷の父と、やまんばの母から産まれた、まっ赤っかの男の子です。
金太郎は力持ち。
やまんばが家を出る際、金太郎が安全にお留守番できるように、まさかりに縛りつけておいたら、なんと、まさかりごと、がたごとひきずって、はいはいしていたくらいです。
金太郎は歩けるようになると、木こりの真似をして、大きな木を切り倒してしまいました。
その木をねぐらにしていた動物達は、たまったものではありません。
リスもさるも、地面に堕ちて目を回してしまいました。
きちんとしつけをしないやまんばに育てられた暴れん坊の金太郎が、どうやってみんなを守る優しさを手に入れたのか。
源頼光の家来になれたのはなぜなのか。
♪まさかり かついだ 金太郎
クマにまたがり お馬の稽古
という童謡がありますが、この絵本を読むと、クマが登場した理由まで分かりますよ。
- 5・6歳~
- わんぱくな男の子に、『金太郎のように、元気で優しい子に成長してほしい』という祈りを込めて
『男の子が元気に成長していきますように』
『将来、立派に出世出来ますように』
という願いを込めてお祝いをする、5月5日の端午の節句。
この日に、ぜひ読み聞かせしてあげたい昔話絵本。
それが、『きんたろう』です。
とは言え
「童謡は知ってるけど、どんな物語か全然覚えていない。」
と言う方も、少なくないのではないでしょうか。
それもそのはず。
他の絵本では、断片的なシーンを羅列しているだけで、どうしてそうなったか書ききれていないため、ちっとも記憶に残らないのです。
どうしてクマと相撲を取るの?
どうして武将まで出世出来たの?
その疑問にきちんとしたストーリーで答えてくれるのが、こちらの『きんたろう』の昔話絵本です。
田島さんのイラストは、可愛いイラストが好きな私から見ると
「ちょっと好き嫌いが分かれそうだな」
と懸念してしまうくらい、ワイルドで迫力満点。
でもこの絵本のすごいところは、さねとうさんの文章が、簡潔でありながらも、このイラストに負けず劣らず、臨場感たっぷりに物語ってくれているところです!
男の子たちのハートを熱くさせ、きっと、やる気スイッチをオンにしてくれることでしょう。
金太郎をモチーフにした五月人形を飾って、このお話を語り聞かせれば、将来、強くて立派な子に育ってくれるかもしれませんね。
うらしまたろう
むかーし。
子どもたちが浜辺で大きな亀に群がって、いじめて遊んでおりました。
そこを通りかかった、うらしまたろう。
「離してやりなよ、かわいそうだよ。」
「いやだい! せっかく、つかまえたんだ」
それならと、うらしまたろうは亀を買い取り、波打ち際へそっと逃してあげました。
「早くお帰り。日が暮れる。二度と、誰にも捕まるなよ。」
それからしばらくたってから
「もしもし、うらしまたろうさん。」
誰かと思ってふと見ると、この間、逃してあげた亀です!
「お礼のしるしに、私が龍宮城へお連れします」
さぁ、うらしまたろうと一緒に、冒険に出かけましょう!
- 読み聞かせするなら、3歳~
- はじめて昔話を聞くお子さんにもぴったり。
- 冒険物語が好きなお子さんや、優しいお子さん、水族館が好きなお子さんに
夏の絵本、と言えば、『うらしまたろう』。
日本五大昔話の一つです。
こちらもいろんな出版社から出ていますが、私はこわせたまみさんの『うらしまたろう』が大好きです。
何度も出てくる
『うみ うみ たっぷん なみ ちゃっぷん』
という、あったかくて優しいフレーズ。
物語全体が、優しく歌うような語り調になっているのが特徴的な絵本なのです。
うらしまたろうと一緒に
じゃぶーん!
と海の中に潜れば、暑い夏も、涼しくて楽しいひとときを過ごせますよ。
高見八重子さんの淡い水彩画が、優しく美しく、そして最後の余韻もたっぷりと、イメージをふくらませてくれる絵本ですよ。
語り終えたら、ぜひ浦島太郎(桐谷健太さん)の『海の声』の歌も一緒に聞かせてあげたいですね。
おじいさんになってから、うらしまたろうがどんな気持ちで浜辺にたたずんでいたのか。
最後のページの浦島太郎のイラストと、『海の声』の歌がぴったりと相まって『失われてからようやく気づく、大切なものへの憧れと悲しみ』を伝えることができますよ。
Momotatro ももたろう
むか~し、むかし。
おばあさんが川へ洗濯をしていると、川上の方から
どんぶらこっこ
どんぶらこっこ~
と、大きな桃が流れてきました。
おばあさんが家に持って帰ってその桃を切ってみると…
おやまぁ、かわいい男の子が出てきたではありませんか!
子どもが授からなかったおじいさんとおばあさんは、にこにこ笑顔。
ももたろうの冒険物語。
いざ、はじまり、はじまり~♪
- 5歳~小学生向け
- 冒険物語が好きなお子さんにぴったりです。
ご家庭で本格的な英語の早期教育に取り組むことが出来ますよ。
『金太郎』、『浦島太郎』、とくれば、この方を忘れるわけには参りません。
いよっ!待ってました、桃太郎!
日本五大昔話の一つにも挙げられている、有名なお話ですね。
でも、私がご紹介するのは、そんじょそこらの『桃太郎』ではありません。
なんと、本文もCDも、全て英語の『桃太郎』です!
みなさんご存知の通り、東京オリンピックに向けて、英語教育が飛躍的に進歩しましたよね。
小学校の高学年で習っていた英語教育は、小学校3・4年生にズドン!と繰り下げ。
5・6年では不規則動詞まで取り扱われるかどうかは分かりませんが、過去形も、未来形も、およそ昔の中1レベルの英文法の授業が繰り広げられます。
そしてなんと…
中学からは「授業中は、日本語禁止!」だというから驚きですよね!
(おしゃべりはなくなるかもしれませんが。代わりに机の下で、こっそり手紙の交換が行われそうな雰囲気ですね。)
この教育の変化の荒波を上手に乗り越えるには、幼児期から英語に慣れ親しむのが大切なのは、言うまでもありません。
そこでおすすめなのが、『英語でよもう! はじめてのめいさくシリーズ』!
おなじみの昔話と、いもとようこさんの優しいイラストが、お子さんと一緒にご両親も、英語の世界に楽しくいざなってくれますよ。
簡単な英単語・英文法を中心として語られているのも魅力的です。
外国の方と異文化交流を図るには、もちろんリスニング力と相手の国の文化に思いをはせる心が必要です。
が、日本の文化を分かりやすく伝えるスピーキング力も欠くことは出来ません。
特にアメリカは、『発言してなんぼ』のお国柄ですから。
うんうん聞いているばかりでは、相手にしてもらえません。
ぜひ、CDの英文を一行流しては、日本語訳を読んであげてくださいね。
(本番で焦らなくてすむように、事前に紙に日本語訳を書いておくと良いですね。
抵抗がなければ、絵本に直接、小さな文字で書きこむ手もあると思います。
もしくは、別冊ですが日本語バージョンもありますので、二冊を見比べてみても面白いと思いますよ。)
簡単な英単語と英文法で、どうやったら上手に説明できるのか。
その素質も、絵本を繰り返し読むうちに、自ずと身につけることが出来るのではないでしょうか。
桃は3種類あるので、トータルで考えると5月~10月までと、旬が長いフルーツです。
ご家庭で桃を食べた日に読み聞かせてあげると、小さい子の好奇心がぐんぐん育ちますよ。
英語に楽しく慣れ親しむには、1冊も多く簡単な英語の絵本を読み聞かせてあげるのが一番。
…とは言え
『簡単な英単語や英文法のみで書かれた英語の絵本を選ぶ』
となると、かなり苦戦しますよね。
バイリンガルならいざ知らず、正しい発音で読み聞かせする、なんて頭が痛くなりそうです。
その点、『英語でよもう! はじめてのめいさく』シリーズは英語の朗読はCDにお任せできるので便利ですよ。
お子さんと一緒に、正しい発音をマスターしましょう。
かぐやひめ
むかし、むかし。
竹取の翁(おきな)という、竹を切って、かごやざるなどを作る仕事をしていたおじいさんがおりました。
ある日、竹取の翁は一本だけ、光っている竹を見つけました。
「こりゃ、なんじゃ…?」
不思議に思って割ってみると、中にはかわいらしい女の子が入っていました。
子供を授かることができなかった、おじいさんとおばあさんは大喜び。
それはそれは大切に育てて、女の子は輝くばかりに美しく育ちました。
二人は女の子を『かぐや姫』と名付け、より一層大切に育てました。
そんなに美しい『かぐや姫』を、男達が放って置くわけがありません。
5人のおうじたちが、さっそく結婚を申し込みに来ました。
しかし、かぐや姫はそれぞれに無理な注文をして結婚を断ってしまいます。
そこには驚くべき、悲しい理由がありました…
かぐや姫と人間たちが織りなす、幻想的な異世界ファンタジーです。
- お姫様や、美しいイラストに興味がある子なら5歳くらいから。
- 意味を理解させながら読み聞かせするなら小学校低学年以上。
- 一人で読むなら、小学校3・4年生でも遅くはありません。
十五夜に読んであげたい昔話、といえば…
日本で初めて作られた物語である『かぐやひめ』です。
というのも、かぐや姫が月に帰ってしまったのは、まんまるいお月さまが輝く、お月見の夜だったからです。
『かぐやひめ』も、色々な作者の手により、各出版社から発行されているので
「どれか一冊だけ買おう」
と思ったら、かなり悩んでしまいますよね。
とは言え、冒頭でお話したように、国語の教科書の古文の授業で習う可能性がある以上、より原文に忠実な絵本を読み聞かせして、幼児期から古典文学に慣れ親しんでもらいたいですよね。
その点、こちらの『かぐやひめ』の絵本はおすすめの一冊です。
なんと言っても
『男性と会うときは、御簾(みす)でしきり、おうぎで顔を隠して面会する』
など、細部まで平安時代のしきたりを忠実に表しているイラストが魅力的。
私事ではありますが、他の絵本では、初対面の男性でも平気な顔で会話しているので、後から
「昔はそういうしきたりだった」
と知った時は
「じゃあ、あの絵本は何だったの!?」
と、ショックを受けたものでした。
我が子には同じ思いはなるべくさせたくありません。
うっとりするほど美しいイラストに魅入られて、お姫様好きな女の子なら5歳くらいから読み聞かせを聞いてくれる子もいます。
「対話式の絵本以外は、気が散らないように、読み聞かせ中は会話NG」
というのが、読み聞かせするときの原則(特に読み聞かせ会ではそういうルールです)。
とは言え、『竹取の翁』『くらもちのみこ』『石づくりのおうじ』など、ところどころに散りばめられている難しい表現は、初めて読むときに、簡単に説明しながら読んであげるといいでしょう。
もちろん、説明が回りくどくならないように
『竹取の翁』=『竹を取って細工をしているおじいさん』
(もしくは、その人を指差す)
くらいの、簡単な説明でお願いします。
それぞれの王子たちは、姫のハートを射止めるために、どうやって無理難題を攻略したかに見せかけたのか。
そして、それがことごとく失敗に終わっていくやりとりがきちんと描かれているのも面白く、読み応えのある一冊です。
こちらの『かぐや姫』は、早いうちから、ぜひ家に置いておきたい絵本です。
読めば読むほど「これは、何?」と興味がわき、古典の素養がだんだんと身についていくことでしょう。
質問されたら、ちゃあんと調べて、分かりやすく説明してあげてくださいね。
さるかにがっせん
ある日のこと。
さるは「秋になったら、柿の実がいっぱい食えるぞ」
と、かにに言って、持っていた柿の種を、かにが持っていたおむすびと交換しました。
♪早く実のなれ、柿の種。出さぬとその芽をちょんぎるぞ。
かには美味しい柿が食べたくて、せっせと柿を育てました。
ところが…
いざ秋になって、美味しそうな柿がたわわに実っても、かには木に登れないので、ひとつも柿をとることが出来ませんでした。
「おらに任せろ」
するするする…と木に登っていったさるですが…
なんと、柿を独り占めされてしまったではありませんか!
「おうい、さるどん。おらにも柿をとってくれ」
「ええい、うるさいかにめ!そんなに欲しけりゃ、くれてやる!」
さるが、まだ青くて固い柿の実をぶつけてきたから、たまりません!
「わっ!」
可哀想に、かにはつぶれてしまいました。
かにには、たくさんの子供達がいました。
こがに達は泣いて悲しみ、敵討ちをする決心をしました。
こがに達がぞろぞろ行進していると
「こがにどん、こがにどん。みんないっしょに、どこへ行く?」
くり、ハチ、うしのふんと、うすが訳を聞いて、味方についてくれました。
さぁ、にっくきさるを、みんなでやっつけに行きましょう!
- 4歳から
- 正義のヒーローが好きな子や、冒険物語が好きな子、仲間思いの優しい子に
秋は果物が美味しい季節。
中でも、甘い柿は最高のごちそうです。
柿と言えば思い出すのが、『さるかにがっせん』。
こちらも、日本五大昔話のひとつですね。
最近の絵本は
「『合戦』なんて、物騒な。『さるかにばなし』にしよう。」
「カニが殺されてしまうなんて、残酷過ぎる。」
「最後は、サルを殺さずに、カニと仲直りさせてハッピーエンドにしよう」
と、どんどんマイルドにお話が作り変えられてしまっているものが多いです。
しかし一方で、仮面ライダーや戦隊モノでは、残酷なシーンも未だにリアルに描写されていますよね。
この違いはなんなのでしょうか?
『百聞は一見にしかず』ということわざの通り、絵本よりもショッキングではないのでしょうか。
やはり『勧善懲悪』を教えるには、多少の残酷な描写は、避けては通れない道だと私は思うのです。
こちらの絵本の表紙は、かわいいおさるさんが美味しそうに柿を食べているので、一見
「今風の優しい物語かな」と思いきや…
かにに青い柿をぶつけるときのさるの顔と言ったら、もう。
『悪い』を通り越して、夢にまで出てきそうなほどの、ドロドロした底知れぬ怖さを感じる狂気が宿った顔になっています。
だからこそ子どもたちは
「そんなに悪い奴なら、みんなでやっつけよう!」
という正義感に燃えるのです。
自分たちよりも強い、うすやハチまで味方につけて、まさしく『合戦』、バトルです。
『さるかに合戦』の世界に勇んで繰り出すには、原話に近いこちらの絵本がおすすめです。
そんなに心配しなくても、大丈夫。
昔から、昔話絵本は「そんなシーン、残酷じゃない?」というところは
『文章では書いているけど絵では描かない』
『悪いヤツというのはきちんと伝えながらも、グロテスクに見せない工夫が施されている』
ものなんですよ。
したきりすずめ
じいさまは、『ちゅん』という雀を飼っておりました。
たいそうかわいがっていて、貴重なお米をちゅんにエサとしてあげるほどです。
しかし、家計を預かるばあさまは、面白くありません。
ばあさまが作ったばかりの洗濯のり(昔はお米で作っていたのです)までちゅんが食べているところを見ると、もう、我慢なりません。
ちょきん!
二度と悪さ出来ないようにと、なんと、ばあさまは、ちゅんの舌をハサミでちょん切ってしまったのです。
ちゅんがいなくなってしまったことを知ったじいさまは、悲しみました。
ちゅんに謝りたくてたまらなくなり、ほうぼうに聞いて回って、『雀のおやど』を一生懸命に探す旅にでかけます。
大好きなじいさまに会えたちゅんは、大喜び。
じいさまを盛大にもてなして
「大きいつづらと、小さなつづら。
どちらがいいですか?」
と、お土産につづらをくれました。
小さなつづらを選んだじいさまが家に帰って中身を見ると…
なんと、りっぱな宝物がキラキラ輝いておりました。
それを知ったばあさまは
「どうして大きなつづらにしなかったの」
と口惜しくてたまりません。
それならと、自ら、すずめのお宿を探しに出かけて行くのですが…
はてさて。
理由はあれど、雀にとっては、大切な、大切な舌を切ったばあさまを、ちゅんはどう思っているのでしょうか?
『お宝の入ったつづら』なんて、本当にくれるのでしょうかねぇ。
- 3・4歳から
- 動物をかわいがる優しい子に
日本五大昔話の一つでありながらも、金太郎以上に
「名前は知っているけど…どういうお話だったっけ?」
という方が多い、『したきりすずめ』。
この機会に、ぜひ読んでみてはいかがでしょうか。
福音館書店から出ている
作:石井桃子、絵:赤羽 末吉さん
の『したきりすずめ』と迷いましたが、こちらの絵本は、絵本ナビでは品切れ中、Amazonでも大型本しかありません。
そういう理由もあって、私はよりお求めやすい、こちらの『したきりすずめ』をおすすめいたします。
『てのひらえほん』シリーズは、A4の半分のサイズなので、おでかけのお供にぴったり。
お布団の中で一緒に仰向けに寝ながら読み聞かせするときにも、手が疲れなくて便利ですよ。
こちらの『したきりすずめ』の作者は『めっきらもっきらどおんどおん』の絵本で有名な長谷川摂子さん。
リズム絵本のような軽やかで優しい語り口調が特徴です。
『日本懐石』と言えば『お膳料理』というイメージがありますが、現代の子どもたちには『あかいおぜん』もイメージしにくくなってしまっているようです。
それを分かりやすく補ってくれるのが、ましま せつこさんのカラーイラスト。
赤いお膳はもちろん、屏風や雀たちの着ている着物の柄まで、アップで見たいほど、細部に渡ってきちんと描かれているのです。
同シリーズの他の作品も読んでみたくなるほど、古(いにしえ)の日本の情緒たっぷりの絵本ですよ。
竹やぶの中の『雀のおやど』を探すために、馬の体を洗った汚い汁と、牛の体を洗った汚い汁を、それぞれ7杯ずつ飲んだじいさまがすごい!
それだけちゅんのことを大切に思い、苦労して探した、ということですね。
かちかち山
むか~し、むかしの、ずぅっと、むかし。
裏山に、いたずらダヌキが住んでいて、里に降りてきては悪さばかりしていました。
「じゃぁ、行ってくるで。気をつけて留守をしててな」
「じいさまも、気をつけて」
じいさまが裏山の畑へ向かう途中のことです。
「おじいさん。」
さっそく出たなっ! いたずらダヌキめ!
…と思いきや、草むらから飛び出してきたのは、前にタヌキにいじめられて怪我をしていたところを、じいさまが助けてあげた、うさぎでした。
すっかり傷も良くなったようです。
「良かった、良かった。」
にこにこしながら畑へついたじいさまは…
「あれーっ!」
びっくり仰天!
なんと、あのいたずらダヌキが、畑に植えて丹精込めて育てていた大根を、一つ残らず掘リ返して、食べ散らかしているではありませんか!
おじいさんは、もうかんかん!
何とかタヌキをつかまえて、台所の天上の梁(はり)に逆さまに吊るしました。
「ばあさんや。今夜は、タヌキ汁にして食ってやるか!」
「それがええ!よう太っとって、うまそうじゃな!」
二人は、いたずらダヌキをこらしめるために、わざと大声で言いました。
案の定タヌキは目をまん丸くして驚いて、冷や汗だらだらです。
そうしておじいさんは、夕飯が出来るまで、荒らされた畑を直しに出かけて行きました。
ぺったりこ
ぺったりこ
おばあさんは、おじいさんの大好きな粟餅をつき始めました。
それを見ていた、いたずらダヌキ。
さっそく、おばあさんに声をかけました。
「ばあさんや。一人で餅をつくのは大変じゃろう。ワシが手伝ってやるから、縄をほどいてくれんか。」
「何を言っとるか。お前なんかにだまされねぇよ。」
一度は断ったばあさまでしたが…
「だますもんか!餅つきがすんだら、また、元通り縛ればいいでねぇか。」
この言葉にすっかりだまされてしまい、タヌキの縄をといて、きねを渡しました。
が…
タヌキがついたのは、なんと、粟餅ではなく、ばあさまの方!
背後から思い切り殴りつけ、殺してしまいました。
おまけにばあさまに変装して、帰ってきたじいさまに、『タヌキ汁』だとだまして、ばあさまの肉で作った汁を食べさせてしまいました。
こんなひどいいたずらダヌキ、どうして放っておくことができましょう!
じいさまが泣きくれているのを見るに見かねたうさぎは、一緒に泣きながら叫びました。
「おじいさん。オラが敵をとってやるから、泣くでねぇ!」
さぁ、賢いうさぎによる復讐の、はじまり、はじまり~♪
日本五大昔話は『勧善懲悪』の復讐劇が多いのですが、『かちかち山』は、『さるかに合戦』と同じか、それよりも凄まじい、サスペンスストーリーです。
- 4歳から
- 勇気のある子、正義感の強い子に
今どきの『かちかち山』は、
「お婆さんが殺されて、おじいさんがそれを知らずに食べてしまった」
というシーンは、あんまりにも残酷だから、という理由でカットしてしまっていますよね。
ただ、それだと
『背中に火を付けた挙げ句に、傷口にみそを塗りたくって痛みを増幅させ、あげくに、どろ船に乗せて池に鎮めてしまう』
という、うさぎの仕返しは、どう考えてもやり過ぎです。
うさぎとタヌキ、どちらが悪いのかよく分からなくなる子も出てきてしまうでしょう。
こちらの絵本は、多少マイルドにしてありますが、原話に近い、まさに、勧善懲悪の物語。
いたずらダヌキの悪知恵にも負けないで、なんとかおばあさんの敵討ちをしようと頑張るうさぎの、ハラハラドキドキな決闘シーンの目白押しです!
怖い話やイラストが苦手な子にとっては、こちらの絵本ではショックが大きすぎるかもしれませんね。
そこらへんは、読み手の大人がきちんとその子の感受性や耐性を見抜き、様子を見守りながら読み聞かせしてあげて下さい。
かさじぞう
むか~し。
笠を作って商いをしているじい(おじいさん)と、ばあ(おばあさん)がいました。
二人の間に6人子どもが産まれましたが、全員、小さいうちに命を落としてしまいました。
ある暮れのこと。
「お年越しだもの。正月魚に、餅に、米。買ってくるから。」
じいはそう言って、街へ笠を売りに出かけました。
しかし、みんなお正月の準備に忙しくて、笠は1枚も売れません。
肩を落として、力なく家に帰ろうとするじいに追い打ちをかけるように、冷たい雪と風が吹き付けてきました。
じいはとうとう疲れ果てて立ち止まりました。
そこは、六地蔵様の(六体、地蔵様が並んでいる)前。
がらんとした野原に、雪まみれの六地蔵様が寂しそうに立っていました。
「おお、寒かろ。寒かろ。冷たかろ。」
じいは思わず、素手でお地蔵様の雪をお払い申し上げました。
「そうだ、売れ残りで申し訳ねぇが、オラの笠、さしあげるべ。」
じいは、丁寧にお地蔵様に笠をかぶせていきました。
しかし、一枚足りません。
そこで、最後のお地蔵様には、自分がかぶっていた古い手ぬぐいをほっかむりさせました。
出迎えたばあは、じいが手ぶらだったので、びっくり。
しかし
「ああよ… 申し訳ねぇ。実は…」
じいから訳を聞くと
「そりゃぁ、良いことしなさった。」
と、ちっとも怒りませんでしたって。
あたたかい囲炉裏を囲んで、
お漬物をぽりぽりかじりながらお湯飲んで。
楽しく歌って。
何もないお年越しでしたが、優しいじいとばあは、幸せな夜を過ごしました。
「オラ達の死んだ子らも、じいさまに笠もらって、喜んでいるべな…」
ばあが、うとうとしながらつぶやいた頃には、じいは隣で、むにゃむにゃ…
もう寝ておりましたって。
そして、その夜のこと…
雪降る夜に訪れた、奇跡の物語。
じいと、ばあと、六地蔵様の優しさが、ほっこり心をあたためてくれる、感動する昔話です。
- 5歳から大人まで楽しめますよ。
- お正月が近づいてきて、そわそわ、うきうきしている子や、温かみのあるイラストが好きな子へ
年越しが近づいたら、ぜひとも読んであげたいのが、『かさじぞう』。
こちらの絵本の『かさじぞう』は、松谷みよ子さんが文を手掛けています。
まるで囲炉裏端でおばあちゃんが語ってくれているような、優しく素朴な語り口調。
ポイントは『なぜおじいさんが六地蔵様に、あんなに親切にしてあげたくなったのか』が、きちんと描かれていることです。
この理由を描いていない『かさじぞう』が、実に、多いこと。
確かに、『死に別れ』を理解していない年齢の子には、その部分は分からないかも知れません。
それでも、じいとばあの優しさは、小さい子の心まで、ほっこりと包み込んでくれます。
そして、時を経て、『死に別れ』を経験、もしくは理解した後に読み返したときに、はじめて、気づくのです。
最後に、六地蔵様がじいとばあに贈った
「じいと、ばあも、まめ(達者)でな。」
という言葉に込められた、哀しいまでに純粋な優しさに。
『かさじぞう』がじいとばあに本当に届けたかったのは、豪華なお正月を迎えるための豪華な商品だけなんかじゃありません。
もっと尊い、じいとばあに対する、亡くなった子どもたちの思いやりだったのではないでしょうか。
この絵本と出会った時に、物語の随所に滲んだそのひたむきな思いに、ぽろぽろと涙がこぼれました。
この『かさじぞう』は、そんな風にして、何度も読み返したくなる絵本です。
実は、松谷みよ子さんの絵本は、イラストも松谷みよ子さんが手掛けている絵本が多いのです。
しかし、こちらの絵本のイラストを描いたのは、『ころわん』シリーズで有名な 黒井健さん。
実に豪華な共演ですね。
文章とイラストが見事に溶け合って、雪が持つ冷たさや静けさ、暖かさまで、実に見事に表現している絵本です。
お年越しの一夜や、六地蔵様がじいとばあの家を探しているシーンに、楽譜のない歌が盛り込まれてあります。
もちろん、リズムに乗って読むだけでもかまいませんが、簡単なメロディーでいいので、ぜひ作曲して読み聞かせしてあげてください。
より印象強い絵本として、心の引き出しに大切にしまってもらえることでしょう。
十二支のはじまり
ある年の暮れ。
『正月の朝、御殿に来るように。来たものから十二番まで順番に一年ずつ、その年の大将にする』
神様が動物たちに、こんなおふれを出したから、さぁ、大変!
なんたって、神様の御殿に十二番目までに着くだけで、その動物の強さや能力にはこれっぽっちも関係なく、一年間、『大将』になれるのですから。
ネズミがトラを相手にいばるなんて、こんな機会でもなければ、まず無理な話です。
動物たちは「我こそは一番のりだ!」と、大騒ぎ!
ところが…
「ちょいと、ちょいと。ねずみどん。」
「なんだい? 猫さん。」
「神様の所へ挨拶に行くのは、いつだっけ?」
あんまりはしゃぎすぎた猫さんは、肝心の『はしゃいだ理由』が、ぽーん!っとどこかへ吹っ飛んでいってしまいました。
「あれ? 猫さん、忘れたの?」
ネズミは、びっくり!
でも同時に、ちょっと、からかってみたくなっちゃいました。
そうして「あのねぇ。正月の2日だよ。」
わざと猫に、1日遅らせた日付を教えてしまったんですって。
さぁ、動物たちの競争のはじまりです。
十二番めまでに神様の御殿にたどり着けるのは、どの動物でしょうか?
- 3歳から
- 動物が大好きなお子さんや、楽しいお話が好きなお子さんへ
子、牛、寅、兎、竜、巳…
あれ? 今年は何年だっけ?
来年は?
どうしてそんな順番になったの?
どうして犬年はあるのに猫年はないの?
疑問がいっぱいで、大人でも順番を覚えるのが大変な十二支。
でも、こちらの絵本でその由来を知れば、親近感がわき、少しは覚えやすくなるのではないでしょうか。
最近は年賀状を書かない家庭が増えてきましたが、12月に入るとやっぱり読みたくなる絵本です。
年賀状のないお正月は、やっぱりさみしいねぇ。
この絵本が「今年はイノシシだったから、来年からまた、一番初めのネズミさんからスタートするよ。さぁ、ネズミさんの年賀状を書こう。」
と話し合うきっかけになるといいですね。
雪女
武蔵(むさし)の国(くに)のある村に、二人の木こりが住んでいました。
茂作(もさく)というおじいさんと、18歳の弟子の巳之吉(みのきち)です。
二人は毎日、渡し船に乗って、森の中に木を切りに出かけていました。
しかし、ある寒い夕暮れのこと。
帰り道にひどい吹雪に会いました。
なんとか渡し場の所へ来ましたが、どうしたことか、肝心の船頭さんがおらず、村へ帰ることが出来ません。
二人は仕方なく、渡し守の小屋の中へ逃げ込みました。
そこで巳之吉が遭遇した、恐怖の一夜。
「私は、お前も、こっちの人のような目に合わせてやろうと思ったけれど、でも、なんだかとてもかわいそうになってきた。
おまえは、まだ年がいかないものね。
巳之吉、お前は可愛い子だね。
もう、悪さはしないよ。
でも、今夜お前が見たことは、誰にも言ってはいけないよ。」
美しいけれど、ぞっとする目を持つ雪女が放った言葉。
夢か幻だと思いたいけれど、さっきまで確かに隣で寝ていたはずの茂作は、冷たく凍え死んでしまっていました。
さて、翌年の冬の夕方のこと。
巳之吉は、これまた家に帰る途中で、一人の娘さんに会いました。
『お雪』という名前の、それはそれは美しい娘さんです。
お雪は両親と死に別れ、江戸にいる親戚の家で働かせてもらおうと旅をしている最中でした。
しかし、巳之吉は一目惚れして、はにかむお雪を、家に連れて帰ってきました。
お雪の人柄の良い立ち居振る舞いを見て、巳之吉のお母さんも喜び、二人はめでたく結ばれました。
実際、お雪はとても良いお嫁さんになり、5年ほど後に巳之吉のお母さんが亡くなる寸前に残した言葉は、巳之吉とお雪の愛情と、お雪をほめる言葉でした。
お雪は男女合わせて十人子どもを生み、巳之吉とともに、幸せな家庭を築いていました。
そう。
あの夜までは…
- 3・4年生~大人向け
- 怖い話の好きな子や、共感能力の高い子に
絵本は、子どものためだけのものでしょうか?
いいえ、実は『大人向け絵本』というのも存在するのです。
こちらの『ゆきおんな』はそのド定番。
サブタイトルに、しっかりと『大人の絵本(小学中級以上の子どもにも)』と明記されているくらいです。
定価は1600円ですが、全国学校図書館協議会や、日本図書館協会から選定を受けただけあって、その価値はみるみるうちにはね上がりました。
現在、Amazonのページを見ると、なんと、中古でも2倍以上の値段がついている、というから驚きですね。
でも、それも、そのはず。
なんて言っても、伊勢英子さんの絵が素晴らしいです。
雪が持つ冷たさ、キーンと耳が痛くなるような静けさが見事にそこに存在し、まるで美術館に行ったように、ついつい手に取って魅入ってしまいます。まるで、この絵本自体が雪女のような美しさ。
そして、平井呈一さんの訳も、これまた見事です。
子どもの頃に読んだ時は、『ゆきおんな』は、ただの『怖い妖怪の物語』だと思っていました。
最後に巳之吉が「絶対に言わない」という約束を破ってしまっても殺されずにすんだのは
『ゆきおんなが子どもたちを愛していたから』
という理由のみだと、勘違いしていたのです。
しかし、この絵本に出会って、小泉八雲さんが本当に伝えたかった事が分かりました。
それは『どう頑張っても妖怪と人間は相容れない』という哀しさです。
最初に出会った恐ろしいシーンからでさえ、雪女は巳之吉に、はかない恋心を秘めていたことが分かります。
「本当は人間になって、愛する巳之吉と、あったかい家庭を築いていきたかったんじゃ?」
と思うほど、巳之吉やお母さんに深い愛情を寄せていたことも、巳之吉のお母さんの言葉から読み取ることが出来ます。
しかし、どんなに愛情を求めても、雪女の思いは報われません。
「黙っていて」
という、たったひとつのお願いも聞いてもらえず、雪のようにはかなく溶けて、風にかき消されてしまいました。
『ゆきおんな』は、みなさんご存知の通り、小泉八雲、こと、ラフカディオ・ハーンの作った物語です。
しかし、『雪女』という雪の妖怪は、確かに日本に存在していました。
『雪むすめ』『雪おなご』『雪女郎(ゆきじょろう)』など、『雪』に関する名前や、『ツララオンナ』『カネコリムスメ』『シガマニョウボウ』など『つらら』に関する名前など、実に数々の異名を持つ、この妖怪。
室町時代には既に『ゆきおんな』の伝説が語られていました。
ゆきおんなは、青森、山形、岩手、新潟、長野、愛媛、奈良、さらには鳥取まで、日本各地に出没しています。
そのストーリーも様々なことを考えると、『雪女』は一人ではなく、そういう妖怪の一族だった、と考えたほうがいいのかもしれませんね。
棺に入る時に着る『白装束』を身にまとっている、雪女。
見た男を死へと誘う、ということを意味しているのでしょうか。
とても美しい女の姿をしていますが、見た男は、このお話の茂作のように冷たい息をかけて凍死させられたり、男の精を吸い尽くして殺されてしまいます。
ぞっとするほど恐ろしい妖怪、というのは全国共通に語り継がれています。
しかし、この絵本に出てくる雪女は、どうでしょう。
「どうしてここまでつくしたのに、ハッピーエンドで終われないの?
どうして巳之吉は、約束を破ってしまったの?」
『怖い』というより、泣きたいほどの哀しい気持ちで、ぎゅっと胸をしめつけられました。
雪の持つ、冷たさ、静けさ、そして、ぬくもりを求めると溶けてしまう哀しさまで、全てつまった、この物語。聞くも涙、語るも涙の怪奇談です。
この『ゆきおんな』の絵本を見たら、あなたの中の『ゆきおんな』のイメージも、変わるかも知れませんよ。
『無知』というのは本当に怖いですね。
だって、『人に化けて人間と共存する』道を選んだ妖怪が、もしも人間に、その正体を見破られてしまったら…
『相手か、自分か、どちらかが死ななければいけない』という恐ろしい掟(おきて)があるんですもの。
『鶴の恩返し』でもそうですが、積極的に人間の男を殺す運命だったはずの雪女もまた、巳之吉への愛情から…
自分が消える方を、自ら選んでしまったのですね。
まとめ
絵本は、実際に書店で価格を見ると驚くほど高価です。
それだけに、少しでも良い絵本を子どもたちに届けてあげたいですよね。
最後に、私が昔話絵本を選ぶときのポイントをまとめます。
- 赤ちゃんに読み聞かせるなら、『あかちゃんのむかしむかし』シリーズがおすすめ。古(いにしえ)の世界に優しくいざなってくれます。
- もっと本格的な昔話を幼い子に伝えたい時は、しかけ絵本で興味を持続させましょう。
- 特定の作者や画家にこだわらず、色んな作風に触れさせることも大切。
読み手が好きなイラストのタッチと、お子さんの好きなイラストのタッチが同じとは限りません。 - 季節を感じる昔話は、ぜひタイムリーに選んで、少しでも日常生活とリンクさせてあげたいものですよね。
そのためには、普段から読み手の方が色んな昔話絵本と触れ合って、「冬になったらこれを読む」などとリストアップしておくことをおすすめします。図書館で予約するときにも便利ですよ。 - 物語への理解力が深まる5歳からは、なるべく原話に近い昔話絵本を選びましょう。古典文学を身近に感じて慣れ親しむ下地を養うことが出来ます。
そのためには、まずは読み手が原話を知っておくことが大切ですね。 - 読み聞かせる前には、絵本の中に古語が入っていないか確認しましょう。
そして、お子さんが分かるような簡単な言葉に置き換えられるように準備しておきましょう。 - 昔話に慣れ親しみながら英語教育も同時に出来る『英語でよもう! はじめてのめいさく』シリーズもおすすめです。
- 大人向けの昔話絵本もありますよ。ぜひ図書館で探してみてくださいね。
昔話絵本を通して、お子さんだけではなく読み手であるお父さん・お母さん方も、古典文学を楽く学べたら、こんなに素敵なことはありませんよね。
お気に入りの一冊が見つかりますように。
願いを込めて。