海女と大あわびのサクッとあらすじ!
まずは、登場人物と簡単なあらすじを見ておこう♪
- 女…漁師のことがたまらなく好きな海女さん。
- 男…貧しい漁師。
- 海女さんの中でもとりわけ美しい女には、漁師をしている恋人がいた。男は貧しく、毎日、朝から晩まで漁に出ていた。たまに時化になって女のもとにやってきても、朝がくるとすぐに帰ってしまう。
- 女は男に逢いたくてたまらなくなる。『大きなあわびに触れると、大時化になるから、近づいてはいけない』という海の掟を逆手に取って、大あわびに小あわびをぶつけては、わざと時化を起こしていた。
- ある時、小あわびをぶつけようとしたが手持ちがなかったので、女はモリで大あわびを傷つけてしまった。女の望むとおりに、たちまち、時化がやって来た!
しかし、喜ぶ女の横で、仲間の海女さんがつぶやいた。
「この時化じゃ、沖の船は全滅だ…!!」 - 女は仲間の海女さん達が止めるのも聞かずに、慌てて男の船を助けに沖に出てしまう。男の船まで、あと少し!しかし、男の目の前で、女の船は、海から上がってきた竜巻に飲み込まれてしまった。助けようとした男も巻き添えになり、二人は二度と浜に帰ってこなかった。
海女と大あわびのあらすじ!
むか~し。
千葉の御宿(おんじゅく)の岩和田港(いわわだこう)には、大きなあわびがありました。
『そのあわびに触れると大時化になる(おおしけ:暴風雨で海が荒れる)から、近づいてはいけない』という海の掟がありました。
さて、海女さん達の中に、ひときわ美しい女がいました。
女には、愛しい恋人がいました。
貧しさに耐えながら、一日中、漁をして暮らしている男です。
そのたくましさに、男は他の海女さんたちからも人気がありました。
ある日のこと。
「今日は時化じゃから、ゆっくり出来る」
と、男が女の家を訪ねてきました。
二人は夢見心地で、一日中、一緒にいました。
しかし、夜が明けると、男はあっさり出かける支度を始めてしまいました。
「今度、いつ逢えるだ?」
女は男に聞きました。
「また、時化が来たらな。
たまには時化もいいもんだ。
お前に逢えるからな。」
(…時化になったら、また、あの人に逢える…!!)
あくる日。
女は、他の海女さんの目を盗んで、海の深くに潜っていきました。
時化を起こして男に逢いたいがばっかりに、大あわびの所へ行ってしまったのです!
女が陸に上がって、掟を破ってしまった恐ろしさに震えていると…
ゴロゴロ、ゴロゴロ…!!
雷鳴がとどろき、本当に海が時化始めたではありませんか!
(おらぁ、逢いたかった…!!)
訪ねてきた男を見るなり、女の想いはほとばしり、二人は夢中で愛し合いました。
しかし、翌朝。
雨が上がると、男はさっさと帰り支度を始めてしまいました。
「…おめぇ、そんなに海が好きか?」
「あぁ。俺は、海に産まれて良かったと思っている」
「おらよりも、か?」
「何、言うだ。海があるから、おめぇとも、こうして逢えるんでねぇか。」
男が帰ってしまうと、女は、男に逢う前よりも、もっともっと淋しくてたまらなくなりました。
それから、何日も、男と逢えない日々が続きました。
(時化になれば、またあの人に逢える…!!)
女は、大あわびに小さいあわびを投げつけ、わざと時化を起こしました。
しかし…
「まだ、夜は明けねぇど!?」
女の止める声も虚しく、男は暗いうちから女の家を飛び出して行ってしまいました。
女が掟を破って時化を呼べば呼ぶほど、男はその埋め合わせをするために、急いで海に行くようになってしまいました。
「こげに時化が起こるとは、おかしい…」
「誰か、大あわびを怒らしとるんとちゃうか?」
「このままじゃ、おらたち、死ななければなんねぇ…」
仲間の海女達の嘆き声も、女の耳には届きません。
ただ、男を奪ってしまう海が、憎らしくてたまりませんでした。
ある日のこと。
女はいつものように、大あわびに小あわびを投げつけようとしましたが、びんの中には1つもあわびが残っていませんでした。
それでも女はあきらめず、なんと、この大あわびに、カンカンとモリを突き立て始めたではありませんか!
(さぁ、時化を起こせ!
風を吹かせて、海を荒れ狂わせろ!!)
ぶしゅ~!!
大あわびから勢いよく水が噴射され、女は岩の上に押し戻されました。
ハッ、と見上げると、待ち望んでいた雷鳴がとどろき、強い風が吹いています。
(もっと荒れろ!
もっと、もっと荒れろ!!)
と、その時、仲間の海女さんがつぶやきました。
「これは、たたりじゃ。
この時化じゃ、沖の船は全滅だ…!!」
それを聞いて、女は急に青冷めました。
(もしや、あの人の船が…!!)
「やめろー!」
他の海女達が必死で呼び止める声も、女の心には響きません。
女は大嵐の中、一心不乱に船をこぎ出しました。
白い波に襲われながら、女は愛しい男の名前を叫び続けました。
と、その時…
「あんたぁ!」
女は、ようやく、男が乗った船を見つけました。
「逃げろぉ! こっちへ来るでねぇっ!」
「あんたぁ!」
女は手を伸ばして男の船に近寄りました。
しかし…
あとちょっと、というところで、女の乗った船は巨大な竜巻に飲み込まれてしまいました。
女を助けようとした男も、たちまち、海に飲み込まれていきました。
そうして、二人は海の藻屑となって消えてしまった、というお話です。
海女と大あわびのまとめ、教訓と感想!
『恋は盲目』
ということわざが、ぴったりの昔話ですね。
それにしても、いくら逢いたいからといっても
- 男は貧しいから、毎日漁に出かけなければ食べていけない
- 愛しい男が海に出ているときに時化を起こしたりしたら、男の身が危ない
ということは、考えつかなかったのでしょうか。
まさに
「私と仕事、どっちを取るの!?」
という自己中状態。
バカな女性に惚れられてしまって、一緒に命を落とすハメになってしまった男が、可哀想に思いました。
ただ、少しうがった見方をすると、あわびは、女性の性器の隠語でもあります。
原文にも『男は他の海女さんたちから人気があった』とありますので、もしかしたら、男は実は二股をかけていたのかもしれません。
『海に出る』=『他の女と会いに行く』という意味ですね。
しまいには浮気が発覚し、女が逆上して、相手の女と修羅場になった末に、男まで殺してしまった、ということなのではないでしょうか。
『可愛さあまって、憎さ100倍』というやつですね。
子どもたちには、ただ
『大好きなら、ちゃんと相手のことを考えようね』
と伝えたいと想いますが…
どちらにせよ、小さい子には話が長いし難しい部分もあるので、小学校中学年~高学年向けのお話なのかな、と思いました。
好きになった人には、幸せになってほしいけど…
恋愛って、難しいんだね。