犬娘のサクッとあらすじ!
まずは、登場人物と簡単なあらすじを見ておこう♪
- きこり…双子の娘をもったが、男手ひとりで育てるのに苦心した。
- 山犬…きこりとある約束をして、娘たちに自分の乳を飲ませた。
- 娘たち…山犬の子犬たちと一緒になかよく育った。
- きこり夫婦は子どもに恵まれなかったが、山の神さまにお願いをしてようやく双子の娘がうまれた。
- しかし妻は産後に死んでしまい、代わりに娘たちに乳を与えたのは山犬だった。
- 娘たちは年頃になり立派な百姓の家に嫁いだが、「娘の枕元には毎晩山犬がでる」と夫たちに怖がられ、家を追い出された。
- きこりが「山犬から乳をもらう代わりに、山犬の子どもたちに娘ふたりを嫁がせる約束だった」と娘たちに話し、娘たちは、自分たちより早く歳を取り死んでしまった山犬の墓の前で仮祝言をあげた。
Contents
犬娘のあらすじ!
昔、飛騨の山奥にきこりの夫婦がいました。
ふたりはとても仲が良く、毎日仕事に励んでいました。
しかし、夫婦のあいだにはいつまでたっても子どもができません。
「子どもがおったら、どれほどよかろうね」
妻が言うときこりもうんうん、と頷きました。
そしてふたりは、山の神さまへお願いをすることにしたのです。
次の日、山の神さまにおそなえものを用意して、夫婦は一生懸命に拝みました。
「山の神さま、どうかふたりほど子を恵んでください。そうしたら仕事も、もっともっと頑張ります」
さて、それからちょうど1年が経った日のこと。
なんと夫婦のもとには、双子の女の子がうまれました。
夫婦は大喜びで、山の神さまにお礼を言います。
「山の神さま、ありがとうございます、ありがとうございます……」
ところが妻は、双子をうんだあと体の調子をくずしてしまいました。
かわいそうに、そのまま亡くなってしまったのです。
その日から、きこりはひとりで赤子を育て始めました。
きこりには乳を用意することができず、かわりにあけびを山から採ってきて与えていました。
しかし赤子の世話は思ったよりもずっと大変です。
きこりはだんだん、途方に暮れはじめました。
そんなとき、きこりがあけびを採りに山へ入ると、山犬の親子がいました。
山犬の母は幼い子ども2匹に、自分の乳を飲ませています。
それを見て、きこりは、はっとしました。
「なあ、なあ、お願いだ。その乳を、かわいそうな俺の娘たちにも分けてくれんか」
山犬はじっときこりの話を聞いています。
「そのかわりに、娘たちが大きくなったら、おまえの子どもたちの嫁にだそう」
山犬はきこりのその言葉にゆっくりと頷きました。
そうして、毎日、毎日、双子の娘たちは山犬の乳を飲み、すくすくと育ちました。
山犬の子どもたちも、娘たちのそばを離れず、互いに仲良く過ごしていました。
やがて娘たちはとても美しい女性に育ちました。
けれど、犬の寿命は短く、娘たちが大人になる頃には子犬たちは歳をとり死んでしまいました。
娘たちはとても悲しみ、2匹の墓をつくり弔います。
「子犬たちは死んでしまった。母犬との約束を忘れたわけではないが、娘たちに伝えなくとも、いいのではないか」
きこりは、「乳をもらうかわりに自分の娘たちを子犬たちの嫁にだす」という約束を、自分の胸のなかへしまっておくことにしました。
しばらくして娘たちはそれぞれ嫁にいきました。
相手は村のなかでもりっぱな百姓の家です。
娘たちは夫の両親から気に入られ、近所からの評判もとてもいい妻になりました。
けれども、夫たちはどんどん顔色が青ざめて、痩せこけていきます。
夫たちは「嫁の枕元に、毎晩、山犬がいる」と言うのです。
とうとう、娘たちは家を追い出されてしまいました。
父親のきこりは娘たちの話を聞き、ようやく山犬との約束のことを話しました。
「お父さん。それは黙っていてはいけませんよ」
娘たちはその日、子犬たちの墓の前で仮祝言をあげました。
空のきれいな日のことでした。
おしまい。
犬娘のまとめ、教訓と感想!
このお話からは、「約束を守る大切さ」をうかがい知ることができる気がします。
山犬たちは亡くなったので、約束をなかったことにして黙っておこう、ときこりは思いました。
でも、きこりが約束を交わした相手の山犬は、なかったことにできる気持ちではなかったのだと思います。
山犬の母は、自分の息子たちの結婚をとても大事に考えていたのではないでしょうか。
それに子犬たちも、一緒になかよく育った娘たちとの結婚を、すごく楽しみにしていたのではないでしょうか。
約束は、自分ひとりだけのものではないのでしょう。
簡単に約束をやぶると相手を傷つけてしまうかもしれないと、忘れずにいたいですね。
動物と人間って、歳をとる早さが違うよね。
たまにさみしくなっちゃう。