最後の一葉のサクッとあらすじ!
まずは、登場人物と簡単なあらすじを見ておこう♪
- スー…ジョンジーと共に画家を目指す女の子。
- ジョンジー…肺炎にかかり、生きる希望を見失っていた。
- ベアマン…ジョンジーに生きていてほしいと願い、命がけで最高の絵を描きあげる。
- スーとジョンジーは芸術家達が集まるアパートの住人で、画家になることを夢見ていた。しかしジョンジーは肺炎にかかり「窓から見える隣の家のつたの葉が落ちる時に、自分も一緒に死んでしまう」と思い込んでいた。スーは同じアパートに住むベアマンに相談に行く。折から嵐になり、今にもつたの葉は全て落ちてしまいそうだった。
- 次の日、ジョンジーはスーにカーテンを開けてほしいと頼む。二人は全てつたの葉は落ちてしまったのでは、と思っていたが、不思議と、一枚だけ葉が残っていた。嵐はひどくなる一方だったが、その次の日も最後の一葉は散らなかった。
- ようやくジョンジーは生きる希望を見出す。医者も、この調子なら肺炎も治るだろうと確証してくれた。喜ぶジョンジー。しかし、なぜかスーは複雑な表情をしていた。
- 実は一昨日の嵐で、本物の葉は全て散ってしまっていた。二人が『最後の一葉』だと思っていたのは、ベアマンが老いた体にむちを打って描き出した、最高傑作だったのだ。ベアマンは冬の雨にずぶ濡れになり、肺炎にかかって亡くなってしまった。
最後の一葉のあらすじ!
ワシントン広場の西に、芸術家達が集まる古いアパートがありました。
そこの3階が、スーとジョンジーの暮らす部屋。
二人もまた、画家を目指していたのです。
ところが…
部屋を借りてから半年後。
ジョンジーは肺炎にかかってしまいました。
「残念だが…
あの娘さんが助かる見込みは、ほとんどないね…」
往診に来てくれたお医者様は、部屋の外でスーに言いました。
「なにより本人が、生きる希望を失っているんだから。
あれじゃ、どんな薬も効かないよ。
彼女が生き残れるかどうかは、気持ち次第、と言うしかないな…」
お医者様が帰った後、スーはわざと明るく口笛を吹きながらジョンジーの部屋に入りました。
ジョンジーはじっと窓の外を見つめて、小声で数を数えています。
「ジョンジー。何を数えているの?」
スーが聞くと、ジョンジーは、窓の外に見える隣の家のつたを指差しました。
「あの葉が全部散った時、私は死んでしまうんだわ…」
「バカなことを言わないで。ジョンジー。」
スーはたまらなくなって、目隠しをするように、ジョンジーの体に覆いかぶさりました。
「お願い、ジョンジー。目をつぶって。嫌なことは考えないで…」
スーは同じアパートに住むベアマンに相談しに行きました。
ベアマンは60歳を超える絵描きさん。
いつか世に残る傑作を描くのが彼の夢でしたが、最近は、ほとんど筆を握っていませんでした。
「なんてこった! そんなバカげた話があるか!!」
ジョンジーの話を聞くと、ベアマンは顔を真っ赤にして叫びました。
「かわいそうなジョンジー。
あぁ、神よ。どうしてあんないい娘が、こんなところで病に伏せなければならんのだ…
いつかワシが傑作を描いて、三人で、このボロアパートから出ていくんだ!」
スーとベアマンがジョンジーの部屋を訪ねると、彼女は眠っていました。
二人は、窓から外を見ました。
しとしと降る、雪混じりの冷たい雨。
吹き付ける強い風…
この天気だと、明日の朝までに、全ての葉が散ってしまうかもしれません。
翌朝、目を覚ましたジョンジーはカーテンを開けてほしいと言いました。
スーが恐る恐るカーテンを開けると…
一体、どうしたことでしょう。
たった一枚だけですが、まだ葉っぱが残っていたのです。
「あれが最期の一枚ね…
でも、今日には散るわね…
そして私も、同じ時間に死ぬんだわ。」
「そんなこと言わないで!
あなたがいなくなったら、私はどうしたらいいの!?」
スーは言いましたが、ジョンジーは何も応えてはくれませんでした。
その日の夜は、さらに強い嵐になりました。
しかし、一枚だけ残った蔦(つた)の葉は、翌朝になってもそこにありました。
強い風に吹かれ、冷たい雨に打たれても、まだそこにあったのです!
ジョンジーは言いました。
「ねぇ、スー。私がバカだったわ。
きっと、私がどれだけ愚かだったか分からせるために、あの最後の一葉を残してるのね。
あぁ…おなかがすいちゃった。スープをちょうだい。」
翌日になると、ジョンジーは鼻歌を歌いながら楽しそうに毛糸で肩掛けを編み始めました。
ジョンジーに生きる希望がわいてきたのです!
スーはジョンジーに優しく言いました。
「今朝もお医者様が来たわ。
もう、あなたは、大丈夫だ…って。」
「そう… よかった。」
ジョンジーはほっと胸をなでおろしながら、笑顔を見せました。
しかし、スーは複雑な表情をしています。
「…どうしたの? スー。
浮かない顔をしているけど。」
「ジョンジー。あなたに話さなければいけないことがあるの。
今朝、ベアマンさんが亡くなったわ。肺炎だって。
一昨日の夜中に、体中ずぶ濡れで苦しがっているベアマンさんを管理人さんが見つけたの。
あの雨の中、どこに行ってたか誰にも話さなかったけど、部屋中に絵の具が散らばっていたんですって。
…ねぇ、ジョンジー。
不思議に思わなかった?
あの、蔦(つた)の葉…
風に吹かれても、ちっとも動かないのよ。」
ジョンジーはびっくりして、最後の一葉をよーく見つめました。
「本物の葉っぱは、一昨日の嵐で全部散ってしまったんですって。
あれは、あなたが生きるためにベアマンさんが命をかけて描いて下さった、最高傑作だったのよ。」
スーの言葉が、静かに部屋の中に響きました。
最後の一葉のまとめ、教訓と感想!
『最後の一葉』の『一葉』は、『ひとは』とも『いちよう』とも読みます。
作者は、アメリカ人のオー・ヘンリー。短編小説家です。
『最後の木の葉』という別のタイトルもあり、小中学校の教科書に採用されているので、ご存知の方もいらっしゃるのではないでしょうか。
ジョンジーの言動を考えると、もしかしたら、肺炎だけではなく、うつ病も併発していたのでは、と思いました。
そんなジョンジーを救ってくれたのは、画家のベアマン。
ジョンジーとのつながりは不明です。
このお話には
「いつかワシが傑作を描いて、三人で、このボロアパートから出ていくんだ!」
という台詞があるので
「そんなに絆が深いのかな?」
と感じられますが、
『ベアマンは夢に破れてやさぐれ、いつも憎まれ口を叩く老人。
ジョンジーの話を聞いても悪態をついた。』
と書かれているお話もあります。
後者だとしたら、すごいドンでん返しですよね。
原作では、どちらなのでしょうか?
ぜひ原作を読んでみたいな、と思いました。
どちらにしろ、ジョンジーを助けたのは、『後世に残る最高傑作を描きたい』と望みながらも、60歳まで夢を叶えられずにいたおじいさんなのは確かです。
『なんとしてでもジョンジーに生きる希望を与えて、病気を治すんだ!』
という使命感と深い愛情が、ベアマンを強く突き動かし、『最期の一葉』という最高傑作をこの世に生み出すことに成功させました。
後世に残るような最高傑作を生み出すには、それくらいの、ほとばしる情熱が必要だ、ということなのかもしれませんね。
しかし、ベアマンは皮肉にも翌朝、ジョンジーと同じ肺炎にかかって命を落としてしまいます。
ベアマンが描いた葉っぱをジョンジーが本物だと思い込んだことも、そのおかげで命拾いをしたことも、ベアマンは知らずにこの世を去ってしまったのです。
感動的ですが、涙なしでは語れないお話ですよね。
けれど、私はこのお話を読んで、もっと気になることがありました。
それは
「真実を知った後、本当にジョンジーは元気になれたのか」
という不安です。
というのは、うつ病患者にとって悪いのは、『気分の波』だからです。
楽しすぎたり、嬉しすぎたりする出来事があっただけでも、悪化するケースがある、うつ病。
はしゃいだ後に疲れたり、急に日常生活が色あせて見えてしまうのが原因です。
そんな繊細で傷つきやすい心の状態になっているうつ病患者にとって
『嬉しさをかみしめて希望を見出した後で、絶望を味わう』
ことほど、うつ病を悪化させるものはありません。
ジョンジーに生きる希望を与えた『最後の一葉』ですが、最悪、
「私があんなバカなことを言わなければ、ベアマンさんは死なずにすんだのに…
こんな私なんて、やっぱり、いないほうがいいんだわ!」
と、後追い自殺を考えてしまったとしても、おかしくはないのです。
元、うつ病患者の私にとっては、このお話は
『感動するストーリー』
だけでは終れない、なんとも言えない後味の悪さを感じました。
もしかしたらそこらへんも、原作では納得のできるラストになっているのでしょうか?
とは言え、英語の小説なんて、私には読めません。
ベアマンはドイツ人で、彼の台詞はドイツなまりがある、といいますから、なおのこと、原作を読むのは不可能に近いのでは…?
でも
「せめて、原作に近いお話を読みたいな」
と、改めて、訳者や編集者の方の大切さを痛感しました。
自分に余裕がある時は他の人に優しく出来るけど、
『自分の命を投げうってでも、誰かのために何かをする』
なんて、なかなか出来ることじゃないよね。
ベアマンさんって、すごいなぁ。