三本足のカラスのサクッとあらすじ!
まずは、登場人物と簡単なあらすじを見ておこう♪
- 弓の名人…二つある太陽のうちの一つを射止めるよう天子様に命ぜられ、征伐に出かける。
- 武蔵国に『太陽が二つ昇る』という怪現象が起きた。あまりの猛暑で、作物もやられ、木も自然発火してしまう。武蔵国の人々は、ほとほと困り果てていた。天子様も心配し、どちらかは魔物であると判断して、弓の名人に征伐しに行くよう命じた。
- 弓の名人は武蔵国で一番高い丘から太陽を討とうとするが、太陽のほうから攻撃してきて、頭や着物を燃やされる。弓の名人は根性を見せ、なんとか高い丘までたどりついたが、暑さにやられて気絶してしまった。
- 一夜明け、太陽との最終決戦の火ぶたが切って落とされた。どちらが本物か見抜こうと、にらみつける弓の名人に、太陽に化けた魔物が襲い掛かってきた!
- 弓矢の名人は、このチャンスを見逃さず、見事に魔物を成敗した。
三本足のカラスのあらすじ!
むか~し。
ある年の夏、武蔵国(むさしのくに)を猛暑が襲いました。
それというのも、なんと、太陽が2つも昇っていたからです!
焼き尽くすような暑さに畑はひび割れ、作物もみんなやられてしまいました。
しまいには、木も自然発火してしまい、武蔵国の人々は困り果てていました。
都の天子様もご心配になり、弓の名人を連れてこさせました。
連れてこられたのは、山のような大男。
空高く飛んでいる鳥でも、たった一矢で射落とすことが出来るほどの名人です。
「天子様、お任せください。」
弓の名人が頼もしく申したので、天子様はたいそうお喜びになり、男に大きな弓と一本の矢を授けました。
「念を押すまでもないが、どちらか一つの太陽は、きっと魔物じゃ。
気をつけてな」
都から武蔵国に旅立つ弓の名人に、家来はそう忠告しました。
その頃、武蔵国では、人々はただ家の中にじっと避難していました。
もう3日も、飲まず食わずです。
食料や水を調達しようと外へ出かけたが最後、ギラギラと容赦なく照りつける太陽にやられて、みるまに、全身、真っ黒にやけどしてしまうのでした。
「おっとぉ。オラ、もう腹減って仕方ねぇ…」
子どもが、今にも泣き出しそうに訴えました。
「私は、喉が乾いて、乾いて、もう、死にそうじゃぁ…」
母親も、そう言って寝込んでしまいました。
と、そのとき…
「ワシが太陽を一つにしてみせる!」
来ました!
都の天子様がつかわしてくれた、弓の名人が!
(一矢で太陽を射落とすには、とにかく、高いところへ登らねば!!)
弓の名人はそう考え、一心不乱に歩き続けました。
先に攻撃をしかけてきたのは、太陽の方でした。
弓の名人を焼き尽くしてしまおうと、ギラギラと熱波を浴びせてきたのです。
弓の名人は思わず立ち止まり、ぜぇぜぇと肩で荒い息をしました。
と…
ボォォォォッ!
弓の名人の頭から火が上がりました!
弓の名人は慌てて手で消しました。
なおも歩き続けていくと…
ボォォォォッ!
今度は、肩から炎が上がりました!
そうこうして、弓の名人は、なんとか、この辺りでは最も高い丘の上までたどり着きました。
が…
「くっ…
くくくっ…!!」
とうとう暑さにやられ、弓の名人は滝のような汗を流しながらその場に倒れて気を失ってしまいました。
これで太陽に化けた魔物に、命を取られてしまうのでしょうか!?
いえ、違います!
危機一髪、日没の時刻になり、太陽の化け物は、本当の太陽と一緒に、悔しそうに西の水平線に沈んでいったのでした。
やがて、太陽がまた昇ってきて、ジリジリと気温が上がってきました。
男はそこで、はた、と意識を取り戻しました。
さぁ、いよいよ、太陽に化けた魔物との最終決戦の火ぶたが切って落とされました!
(どちらが魔物の太陽だろう…)
男は、みきわめようと、鋭い眼光で、じっと太陽をにらみつけました。
すると…
突然、ひとつの太陽が男を襲ってきました。
(こっちかっ!!)
ギリギリギリ…!!
男はありったけの力を込めて矢をしぼり…
(おのれ、この矢を受けてみよっ!!)
シュッ! と矢を放ちました。
「ギャァァァァッ!」
恐ろしい叫び声が辺り一面に響き渡りました。
男の矢は、見事、相手の心臓を一突きしたのです!
あれだけ人々を苦しめた太陽の正体は、山のように大きなからすでした。
足が三本も生えています。
弓の名人は武蔵国の人々から感謝され、天子様もたくさんのごほうびを与えました。
武蔵国にはたくさんの恵みの雨が降り、干からびた大地も、すっかり潤いを取り戻しました。
それからこの地は、『魔物を射た』ところから『射留魔』と呼ばれるようになり、それが転じて『入間』と呼ばれるようになったそうです。
三本足のカラスのまとめ、教訓と感想!
『三本足のカラス』と聞くと、サッカーファンなら、日本代表の公式ユニフォームのエンブレムに刻印されている黒い鳥をイメージするのではないでしょうか。
あの三本足のカラスの正式名称は、『八咫烏(やたがらす)』。
『咫(あた)』は昔の長さの単位で
1咫(あた)=18cmです。
八咫の烏、ということは、18×8=144cmもあるカラス、という意味です。
なんて大きなカラスでしょう!
小学校高学年の女子の平均身長と同じくらいもありますね。
『八咫烏(やたがらす)』は、日本神話に出てくるカラスで、神武天皇が天皇に即位するために『神武東征』を行った際、熊野国(瀬戸内海)から大和国(近畿)に進むための道案内をしてくれました。そのため、『導きの神』として信仰されています。
そして、1931年。
『日本のサッカーも勝利へ導いてほしい』という願いを込めて、JFA(日本サッカー協会)のシンボルマークに起用されました。
なので、てっきりこの昔話は、その『八咫烏(やたがらす)』についての物語かと思っていたのですが…
確かに、この伝説に出てくる魔物も、『八咫烏(やたがらす)』と同じくらいの大きさだと思います。
が…
『太陽の化身』ではなく、『太陽に化けて』、ひどい猛暑で、散々、熊野の人々を苦しめた魔物で。
天子様の案内役をするどころか、天子様から弓の名人を使って征伐されてしまった…
なんて。
『所変われば品変わる』
と言いますが、これでは、まるっきり真逆の存在ですよね。
魔物の正体なんて何だっていいのに、どうしてよりにもよって、三本足のからすなんだ…
と、ショックで目の前がくらくらしてしまいました。
『三本足のカラス』は、埼玉に伝わる昔話です。
八咫烏(やたがらす)との関係性をリサーチしてみましたが、結局、分らずじまいで終わってしまいました。
(朝廷の派閥争いを記したものだ、と主張するブログはありましたが)
見た目は同じですが
「これはこれ、それはそれ」
と、とらえたほうが良いのかもしれませんね。
それにしても、この弓の名人の活躍っぷりには目を見張ります。
地元の人々が、熱すぎて家から一歩も出られない中、猛然と立ち向かいます。
太陽に頭を焼かれようが、着物を焼かれようが、天子様の命を果たすために、ただひたすら、一心不乱で魔物に挑み続けます。
まん丸の太陽に化けていたのに、魔物の心臓がどこにあるか、なんて、どうやって見抜いたのでしょう。
『心の目で見た』というやつでしょうか。
勧善懲悪のお話ですから、最後に魔物が
「ギャァァァァッ!」
とおたけびを上げたところなどは、気分がスカッとしました。
戦隊モノや仮面ライダーが好きな子、冒険のお話が好きな子には、おすすめの昔話だと思います。
それにしても今年の夏は暑いねぇ。
…ハッ!
もしかしたら、太陽が二つあったりして!?