やせうまのサクッとあらすじ!
まずは、登場人物と簡単なあらすじを見ておこう♪
- 男…炭焼き(木炭を作る仕事)をしている貧乏な男で、とても優しい。
- あお…田んぼでこき使われていた、年老いてやせこけた馬。
- 貧乏な炭焼きの男は、田んぼで、やせた馬がこき使われているのを見かける。可哀想に思い、炭俵一俵と交換して連れて帰る。『あお』と名付け、仕事はさせずに家の中で可愛がっていた。
- あるとき、あおがいなくなった。男の仕事を手伝うために家から抜け出し、炭焼き小屋で男が来るのを待っていたのだ。男は嬉しく思い、その日から、あおの背中に炭俵を一俵だけ乗せて、一緒に仕事をすることにした。
- 日照りが続くある年のこと。仕事の途中にあおは転倒し、足を折ってしまった。
- 男があおをおぶって帰ろうとすると、あおは背負子(しょいこ)に姿を変えた。背負子を使うとたくさんの荷を一度に運べる。やせ馬をバカにしていた村人たちも、ありがたがって背負子を使った。
やせうまのあらすじ!
むか~し。
貧乏な炭焼きの男がいました。
男は遠い山で木を切り、炭を焼いては、里まで持っていって売っていました。
しかし、山から炭を運ぶのは大変な力仕事。
一日かけても、炭を一俵、運ぶのが精一杯です。
「やい! この役立たず! もっとしっかり働かんか!!」
ある日、山から降りていた炭焼の男は、怒鳴り声に、ふと、目をやりました。
年老いてやせこけた馬が、田を耕す道具をつけられ、お百姓さんにムチで打たれています。
炭焼きの男は可哀想に思い、
背負ってきた炭俵一俵とやせこけていた馬を交換することにしました。
「後で、やだ、なんて言っても、わしゃ知らんぞ。」
あまりの好条件に、お百姓さんは念を押しましたが
「そりゃ大丈夫。俺は一人暮らしで淋しいで、働かねぇでも、この馬と一緒に暮らすつもりじゃ。」
と、炭焼きの男は笑顔で答えました。
一人暮らしの炭焼きの男は家の中に馬を上げると、綱でつなぐこともなく、たいそうかわいがりました。
おかげでやせ馬も少しは太ってきましたが、他の馬とは比べ物になりません。
「すまねぇなぁ、あお。
俺に稼ぎがあったら、お前にもたらふく麦食わせて、元気つけさせてやるになぁ。
そうして、おらの仕事、手伝ってもらうだがなぁ…」
それから少し経った、ある朝のこと。
男が目を覚ますと、あおがいなくなっていました。
もしやと思って、譲り受けてきたお百姓さんを訪ねましたが、そこにもいません。
あちこち探しましたが、とうとう見つからず、仕方なく男が炭焼小屋に行くと…
なんと、そこに、あおがいるではありませんか!
あおは男の仕事を手伝ってあげようとしたのです。
「すまねぇ。お前には心配かけたくなかっただによぉ…」
男は感動して泣きました。
男とあおは、毎日一緒に仕事に行くようになりました。
あおが炭俵を、男がまきを運びます。
しかし、村の連中は、あおが通る度に
「やせ馬が通りよるぞ! 馬より炭俵のほうが、よぉ肥えとるぞ!」
と指を指して笑います。
子どもたちまでバカにしました。
「あおよ、毎日すまねぇなぁ。
おめぇのおかげで、少しずつ暮らしが楽になってきた。
もう少しの辛抱だ。
そうしたら、おめぇに、たらふく麦を食わしてやれるでな。
それまで、頑張ってくれや。」
と、男は優しく、あおに話しかけました。
ところが、翌年。
村は何年かぶりの冷害に襲われました。
麦どころか、粟つぶも獲れません。
男は、自分の分まで、あおに与えましたが、あおは前より一層やせてしまいました。
それでもあおは、毎日、一生懸命、男と一緒に働きました。
ある日のことです。
「さて、山を降りるとするか。
あおよ、あんまり無理せんでいいぞ。ゆっくり歩けよ。」
男は心配になってあおに言いました。
「あお。少し休んでいくか」
と男が言っても、あおは歩を止めません。
と、その時です!
石につまづいたあおは、背負っていた炭俵ごと、
地面にもんどり打って倒れてしまいました。
「あお!!」
男は急いであおに駆け寄りました。
「しっかりしろ、しっかりしろ!!
…こりゃいけねぇ。
足を折ってしまっただな。」
男は無我夢中で、荷を積んだ馬ごと背負いました。
やせ馬とは言え、それはそれは重く、一歩も動けません。
と、その時です。
どこからともなく、一陣の風が吹いてきて、男は目を閉じました。
風が吹き抜け
「よし、あお、行くぞ!」
と男は言って、びっくりしました。突然背中が軽くなったのです。
「あお、どうしたんじゃ!?」
背中から降ろしてみると、やせ馬は背負子(しょいこ)に変わってしまっていました。
「あお。
おめぇ、こんな姿になっちまってよう…」
男は背中から降ろし、両手で背負子を持って泣き崩れました。
それからというもの、男は背負子を使って、前より一層働きました。
背負子を使うと、2俵いっぺんに運ぶことが出来たのです。
そして、翌年、豊作になると
「ほれ、あおよ。おめぇの好きな麦だ。たぁんと食べろや。」
そう言って、男は、背負子に、ありったけの麦を供えました。
村人たちも、この道具を真似して作りました。
そして、その便利さにすっかり感心しました。
今でも、ある地方では背負子のことを『やせ馬』と呼ぶそうです。
やせうまのまとめ、教訓と感想!
これは福島県に伝わる昔話です。
炭焼きの男と、やせ馬の友情が、たまらなく胸を熱くしますね。
昔は、『ペット』という概念はありませんでした。
特に馬や牛は、働くための道具だったのです。
しかし、男は、年老いてやせた馬を、まるで人間のように扱って仕事をさせずに大切にしました。
これまでさんざん働いてきたので、少し楽をさせてあげたかったのでしょう。
その男の行動にも驚きますが、少しでも男の役に立とうとする、やせ馬の行動も、目をみはるばかりですよね。
あたたかな家を飛び出してまで自ら仕事を買って出て、しまいには、背負子になってしまうなんて。
人間同士でも、ここまで心を通わせる関係を築くのは、なかなか、難しいのではないでしょうか。
『自分のことよりも、誰かを思いやる気持ち』の大切さを教えてくれるお話です。
あおが死んでしまうシーンは、思わず涙がこぼれそうになったよ。