おもかる石のサクッとあらすじ!
まずは、登場人物と簡単なあらすじを見ておこう♪
- 平六(へいろく)…おもかる石の第一発見者。
- 大男…力自慢。
- 村人たちは村に災いが降ってこないように観音堂を建てる。平六が朝早くにお参りに出かけると、観音堂の真ん前に大きな石が置かれていた。10人がかりでも動かない。
- その晩、平六の息子が寝込んでしまった。平六が観音様にお祈りした後、石にちょいっと触れると、石はごろんと動き、平六の息子の病気はころりと治った。村長は『観音様にお祈りをして、その願いが叶う時だけ石が軽くなる』法則を発見する。
- みんなが石で占いをしていると、大男がやって来た。バカ力で石を持ち上げようとするが動かない。村人たちは「信心が足りないからだ」と笑う。怒った大男が村人を殴ろうとすると、村人がよけ、背後にあった石を殴って手を痛めてしまった。大男の怒りは石に向かい、おしっこをかける。
- すると石は燃えだし、逃げようとした男の尻に火が着いた。大男は慌てふためきながら、村から逃げていった。人々はこの不思議な石のことを『おもかる石』と呼び、それからも、この石でさまざまなことを占った。
おもかる石のあらすじ!
むか~し。
岐阜県の外れに、小さい村がありました。
長い間、水害や凶作、流行り病などといった災いに見舞われない、とてものどかな村でした。
けれども、こうも平和だと、「そのうち何かとてつもなく悪いことが起こるかも」とかえって心配になってきてしまいます。
そこで村人達は、村の入口に観音堂を建て、毎日拝むことにしました。
「おら、毎朝一番にお参りに来るだ!」
とみんなの前で宣言した平六は、次の日、約束どおりに観音堂に行きました。
すると、どうでしょう。
観音堂の正面をふさぐように、
でーん!
と大きな石が陣取っているではありませんか。
これでは、お参りがしにくくて仕方がありません。
平六は石をよけようとしましたが、ちっとも動いてくれません。
そこで村人たちに知らせましたが、10人がかりでも、石はびくりともしませんでした。
その夜、平六の息子が高熱を出して寝込んでしまいました。
この村にはお医者さんなどおりません。
平六と奥さんは夜通し看病しましたが、一向によくなりません。
そんな息子の姿を見ているのがつらくなった平六は、明け方近く、そっと家を抜け出しました。
気がつくと、そこは、観音堂の前です。
平六は石と観音堂の間になんとか身を滑り込ませると、観音様に一生懸命お祈りを捧げました。
帰ろうとした平六が、ふと、後ろの石を触った途端…
あれほど大勢でも動かせなかった石が、ごろりと動いたではありませんか!
平六はバランスを崩して、すってーん!としりもちをついてしまいました。
不思議に思った平六が、試しに石を持ち上げてみると、なんと、平六一人でも、持ち上げることが出来ました。
びっくりした平六は、慌てて家に向かって駆け出しました。
戸を開けて、さらにびっくり!
息子はすっかり熱も下がり、にこにこ笑顔で平六を迎えたのです。
その朝、村人たちは平六の話を聞いて、さっそく石の所に集まりました。
他の男が動かしてみましたが、ぴくりとも石は動きません。
長老はしばらく考えた後、観音様に『村の豊作』を一生懸命お祈りした後、石を持ってみました。
すると…
なんと、80歳近い長老も、一人で石を持ち上げてしまったのです!
「やっぱり。思ったとおりじゃ。この石は観音様が下されたのじゃ。
観音様にお祈りをした後、そのお祈りが叶う時だけ、石を持ち上げることができるんじゃよ」
と、長老は言いました。
さっそく村人たちは、代わる代わる観音様にお祈りしては、石を持ち上げてみました。
「一生、楽をして暮らせるくれぇ大金をお恵みくだせえ」
などと祈った者は、石をぴくりとも動かすことが出来ませんでした。
その時、山のような大男が村のそばを通りかかりました。
「もたもたしやがって! この、おいぼれ馬めっ!!」
と乗っている馬をムチで叩くほどの乱暴者です。
大男は、村人たちが代わる代わる石を持ち上げて、わいわい騒いでいるのを見て、てっきり、力比べをしているのだと勘違いしました。
そして、村人たちを押しのけると、むんずと石に手をかけました。
大男は、ひょいっ、と石を持ち上げてどこかへ捨てるはずでした。
ところが、どんなに力を込めても、石はちっとも動きません。
それを見た村人は
「心がけの悪いものがやっても、ダメなものじゃな~」
と笑いました。
「この野郎! よくもワシをバカにしおったな!」
大男は、もうかんかんです。
村人をなぐろうとしましたが、村人がよけたため、振りかざした拳は石に当たってしまいました。
飛び上がって痛がる大男を見て、さらに村人たちは笑います。
「このいまいましい石め! こうしてくれるわい!!」
頭にきた大男は、石におしっこをかけました。
「あぁ! そんなことをしたら、バチが当たる!!」
と村人は忠告しましたが
「ふん! ちゃんちゃらおかしいわい! ただの石でねぇか!」
と、大男は聞く耳を持ちません。
すると、どうでしょう。
おしっこがかかった所から、見る間に炎が上がり、石は真っ赤な火の玉になったのです!
大男がびっくりして逃げようとすると、そのお尻に火が引火しました。
「たっ、たっ、たすけてくれぇ~!」
大男は乗ってきた馬も放り出して、慌てて逃げていきました。
これには、大男に虐げられてきた馬も、大笑い。
大男がいなくなると、またたく間に石の火は消え、何事もなかったかのように鎮まりました。
人々は、重くなったり軽くなったりする、この不思議な石を、『おもかる石』と呼びました。
そしてそれからも、いろいろなことを占いました。
おもかる石のまとめ、教訓と感想!
これは、岐阜県岐阜市に伝わる昔話です。
平六の話から
「この石は観音様が下さった石じゃ。
観音様に願掛けをし、願い事がかなうときだけ石が軽くなる。
石が邪魔だ、などと信仰心がなく持ったり、邪(よこしま)なお願いの時は絶対に動かない」
と見抜いた長老さん。
さすがの洞察力ですね。
このように、村の長老さんは、村一番の賢者で、人々が困った時に知恵を授けてくれました。
『くまのプーさん』で言う『オウル(ふくろう)』と同じですね。
『重いか、軽いかで、占う石』を略して『重軽石(おもかるいし)』という名前がつけられました。
石で手軽に占える、なんて、面白いですね。
さて、この昔話は、フィクションでしょうか?
それとも、ノンフィクション?
調べてみた所、なんと、実際に、岐阜県岐阜市の『金(こがね)』神社に、その重さで占いが出来る石が存在しました!
『おもかるさま』と呼ばれています。
『おもかるさま』が乗っている台には、次のように書いてあります。
『願いを込め
もろ手を添えて
そっと抱き
重いか 軽いか
思いが叶うか
おもかるさま』
つまり、この昔話のように大きな石ではなく、願いが叶わなくても持ち上げることが出来てしまうのです。
占い方法は、まず金神社に参拝し、その右横にある石の前で願い事をします。
それから、その石の重さを予想します。
実際に持ってみて、軽ければ願いが叶い、重ければ叶いません。
自分の思いがどれだけ重いか(強いか)、その石の重さと比べるのです。
意思が強ければ、どんな困難にあっても成就しようとしますから、己の努力で願いが叶う、という感じでしょうか。
『石の重さ』で『意志の重さ』を測る、なんて、洒落ではないと思いますが、なんだか面白いですよね。
金神社の歴史はとても古く、西暦135年(なんと、1900年も前!)に建てられました。
金運や財運に関するご利益があり、TVでも取り上げられるほど人気のあるパワースポットです。
また、『おもかる石』は日本のあちこちに存在します。
有名なのは、京都の伏見稲荷大社の『おもかる石』です。
こちらは、『願いが叶うかどうか』ではなく、『願いが叶う日が近いか、遠いか』という占い結果が出ます。
実物を見たことはありませんが、写真で見る限りでは、2つともボウリングの玉より少し小さいくらいの大きさのようです。
あなたも、機会があったら、ぜひ『おもかる石』で占いを楽しんでみてはいかがでしょうか?
石で占うの、面白いな。
私もやってみたいわ。