初夢長者のサクッとあらすじ!
まずは、登場人物と簡単なあらすじを見ておこう♪
- 長者様…みんなから縁起の良い初夢の話を買おうとする。
- 小僧さん…長者様にも、父親にも、決して初夢の話はしなかった。
- 鬼の大将…小僧さんを太らせて食ってしまう計画を立てる。
- 子鬼…小僧さんと仲良くなり、自慢気に鬼の大将が大切にしている宝の話をしてしまう。
- 西の長者家族…娘の病気を治してくれた小僧さんを、お婿さんにもらう。
- 東の長者家族…同じく、娘の病気を小僧さんに治してもらう。西の長者から小僧さんを奪おうとする。
- 長者様は、1分で初夢の話を買うことにした。しかし、値段を上げても小僧さんが頑なに初夢の話をしないので、怒っていとまを出してしまった。小僧さんのその態度を見て、父親も激怒! とうとう小僧さんは『うつぼ船』に入れられ、海に流されてしまった。
- 流れ着いたのは鬼ヶ島! 鬼の大将は小僧さんを太らせてから食べてしまおうともくろんだが、小僧さんは知恵を働かせ、まんまと鬼の大将から3つの宝物を盗んで、鬼ヶ島を脱出することに成功する。小僧さんは上手に宝物を使って西の長者の娘の病気を治し、婿に迎え入れられた。
- 東の長者の娘も重い病にかかっていた。小僧さんの噂を聞き、さっそく娘の病気を治してもらう。そして、西の長者から婿さんを奪おうともくろんだ。
- 殿様のお裁きで、小僧さんは、月の前半は東の長者家族、後半は西の長者家族の婿になることに決まった。こうして小僧さんは、両方の家族の財宝とお嫁さんを見事に手に入れ、幸せに暮らしたとさ。
初夢長者のあらすじ!
みなさんは、『初夢』というのはいつ見た夢か、ご存知ですか?
『初めて』というくらいだから、大晦日の夜(1月1日の朝まで)に見た夢のこと?
いえいえ、実は、1月2日の夜に見る夢のことなんです。
このお話は、むかしむかし、ある長者様が
「どんな初夢を見たか、明日話してくんろ。
1分で買うだで」
と言ったことから始まります。
宴会をしていた者たちはびっくり仰天!
1分といえば、現代では2万円ほどに相当します。
みんな、早々に床につきましたが、一番小さい小僧さんだけは、夜遅くまで起きていました。
小僧さんはのんびりと紙で船を折り、それを枕の下に入れて寝ました。
「さぁて、みんな、昨夜はどんな夢を見た?
順から言うてみぃ。」
と、長者様。
「はい。私は…」
みんな、口々にめでたい話をしていきます。
長者様もおかみさんも、大満足で楽しげに聞いていました。
ところが…
「おら、なんにも言われん。」
どうしたわけか、一番小さい小僧さんだけは、首を横に振るではありませんか!
「長者様に話されんとは、なんという事を言う!」
大人が叱りましたが、それでも小僧さんは言いません。
長者様は、なんとしてでも小僧さんの話を聞いてみたくなりました。
「なら、20分ではどうじゃ?」
「いいや、なんぼでも話されん。」
「ん~… なら、1両(なんと、現代では7万5千円相当!)ではどうじゃ?」
「あんた…!」
おかみさんは止めようとしましたが、長者様は意地になって、どんどん金額をつり上げていきます。
「…20両ではどうじゃ!?」
それでも黙って首を横に振る小僧さんに、とうとう長者様の堪忍袋の尾が切れて…
「出ていけ~!」
小僧さんは、親父さんの所へ帰されてしまいました。
親父さんは追い出された理由を聞いて、ん~…と、うなりました。
「…で、どないな夢だ?」
「そがいな!
主人に話さんかったもんを、親に言えるかぁっ!」
「なんだと! 言えっ! 言わんかっ!」
「絶対に、言われん!!」
小僧さんの強情な態度に、親父さんの怒りも爆発!
親父さんは『うつぼ船』を作って小僧さんを放り込み、ソテツの実を入れて、島流しにしてしまいました。
小僧さんの乗った船は、ふらふらと行くあてもなく、海の上をさまよいました。
1つかじれば、3日の食事。
2つかじれば、7日の食事…
うつぼ船に流されたからに、二度と我が家に帰られぬ……
何十日もして、ようやく船がたどり着いた、その島は…!
「あれ? なんだや、この箱は。」
「ちょっくら、開けてみるか… あれ? これは。人間じゃぁっ!」
なんと、鬼ヶ島でした!
わらわらと寄ってきた鬼たちは、小僧さんを鬼の大将の前に連れて行ってしまいました。
「こんなにやせておっては、どうにもならんわい。」
鬼の大将は、小僧さんを岩屋の牢獄に入れました。
丸々と太らせてから食べることにしたのです。
毎日、子鬼が食べ物を持ってきてくれたので、ガリガリだった小僧さんは、ぷくぷく太っていきました。
「…ねぇねぇねぇ、子鬼くん。」
小僧さんは食べ物を置いて帰ろうとする子鬼に話しかけました。
いつしか、すっかり、子鬼と仲良くなっていたのです。
「大将の岩屋に、宝物がたくさんあるだでな?」
「うんうん、たくさんあるよ。
その中でも大将が特に大切にしているものが3つあるだ。
1つは千里棒。「千里!」と言えば、千里飛ぶ棒だ。
次は、生き棒。死にそうな人間でも、これで人撫ですれば、たちどころに生き返る。
3つめは、聞き耳棒。鳥や獣の言うことが、何でも分かるのさ。
…ねぇねぇ、すごいお宝だろう?」
何日かして、小僧さんは再び鬼の大将の前に連れて行かれました。
「うまそうに太ったな。」
鬼の大将は、さっそく小僧さんを指でつかみ、口に運ぼうとしましたが…
「うわっ、うわっ! 大将、待ってくりょ!」
小僧さんはバタバタしながら言いました。
「おら、この島に来る前、友達と賭けをしただ!
竜宮と鬼ヶ島と、どっちが立派な宝物があるか、って。
で、おら、鬼ヶ島だと言うただ。
死ぬ前に宝物見せてくんろ~!」
ぱんっ!と手を合わせて頼み込む小僧さんを見て、鬼の大将は、ふはははは…!と笑いました。
「わしの宝は、竜宮などと比べ物にならんけん!」
鬼の大将は家来に言いつけ、子鬼が言っていた3つの棒を小僧さんに見せました。
「どうじゃ、すごいお宝じゃろう?」
「大将。一度だけ、その宝、握らせてくんろ。そしたら安心してあの世に行けるべ。」
「それもそうだ。
だがな、小僧。
握ってもええが、決して物を言うちゃならんぞ? 黙って握れや?」
鬼の大将は怖い顔で念を押し
「言わん、言わん!」
必死に言う小僧さんを信じて、3つの宝を小僧さんの手の平に乗せていきました。
「どうじゃ、満足したか?」
その途端…
「千里、千里っ!!」
小僧さんが大声で叫んだからたまりません!
ぴゅ~!!
千里棒は小僧さんを連れて、ひとっとび。
たちまち小僧さんは、鬼ヶ島から脱出したのでありました。
千里棒が連れて行ってくれたのは、大阪でした。
「西の長者の娘が死にそうだ」
小僧さんは聞き耳棒でカラスの話を聞き、さっそく西の長者の家を訪ねました。
小僧さんは人払いをすると、鬼の生き棒で娘の鼻先をなでてみました。
…と、どうでしょう。
娘の顔色は、本当に、みるみる良くなっていくではありませんか!
「お父さん、お母さん。
あたし、元気になりました。
ご安心あしゃっせ」
娘の言葉を聞いて、長者夫婦は泣いて喜びました。
そして、お礼に、命の恩人である小僧さんを、娘の婿に迎えてくれました。
ところで。
西の長者と川を挟んだ向こう岸には、東の長者がおりました。
ここの一人娘も重い病にかかっています。
ほとほと困っていた東の長者は、小僧さんの話を聞きつけ、さっそく西の長者の屋敷に駆け込みました。
小僧さんは、ちょちょいっと西の長者の娘の病気も治してやりました。
「ありがとうございます。
貴方様は娘の命の恩人だで、どうぞしばらくいてくだされ…」
東の長者は小僧さんを引き止めて豪華にもてなし、なかなか帰そうとはしませんでした。
東の長者の娘から言い寄られ、小僧さんもまんざらでもない様子です。
西の長者殿は、もうかんかん!
婿を取り合い、東の長者殿と大げんかになりました。
両者は一歩も譲らず、とうとう殿様のお裁きをあおぐことになりました。
弱った殿様はこう申し付けました。
「一月のうち、前の15日は東の婿になれ。
後の15日は、西の婿になれ!」
こうして、川には橋がかけられました。
東から中ほどまでは銀の橋、そこから先は金の橋。
婿殿は毎月15日の夜になると、東の長者の娘に手を引かれて、橋を渡っていきます。
中ほどでは、西の長者の娘が首を長くして婿殿を待っているのです。
「俺は今、こんな身分になったが、これも皆、初夢のおかげだ…
鬼さん、ありがとよ。」
小僧さんは紙で作った船に、3つの宝の棒を乗せて川の真ん中から流しました。
実は小僧さんが見た夢は
『金の大黒様を前と後ろに抱いた夢』
でした。
初夢を誰にも話さないでおくと、その夢が叶うんですってさ。
初夢長者のまとめ、教訓と感想!
『初夢を話さないでおくと、夢が叶う』
というのは知っているけれど、果たして小僧さんのように頑なに信じ続けることは出来るでしょうか?
雇い主を怒らせてしまったら、明日から自分の居場所がなくなってしまいます。
一家の大黒柱の父親を怒らせたら、どうされることやら分かったものではありません。
しかも、小僧さんが見た初夢は、冷静になって考えると
「なんじゃらほい?」
と首を傾げてしまうような、まるで現実味のない内容です。
私なら、前のものに続いて、さっさと初夢の内容を話してしまっていたことでしょう。
そのときに言えなくても、20両(なんと、140万円!)も積まれた段階で、恐れ多いと思って話してしまっていたと思います。
それでも話さないなんて、とんだロマンチストか…?
と思いきや、それからの小僧さんの活躍には眼を見張るものがありますよね。
天上さえ板で打ち付けられてしまっている『うつぼ船』の中で何十日も生き延びた生命力。
敵であるはずの子鬼と、こんなに打ちとけることが出来るコミュニケーション能力。
食べられそうになっても、平然と鬼の大将をだまし続ける演技力。
どれをとっても天下一です。
大阪についてからは、なんだか他の昔話とごちゃまぜになっているような気がしなくもないのですが…(苦笑)
冒険のお話が大好きな子にはぴったりの、この昔話
ぜひ1月2日の夜に話して聞かせてあげたいですね。
ちなみに、小僧さんが枕の下に入れた船の折り紙も、実はこの昔ばなしの陰のマストアイテムです。
なんと、室町時代から伝わる、素敵な初夢を見るためのおまじないだったのです!
おまじないの方法は、まず千代紙や折り紙の裏に、次の和歌を書きます。
『なかきよの
とおのねふり(眠り)の みなめさめ(皆 目覚め)
なみのりふねの おとのよきかな』
なんと、上から読んでも下から読んでも同じく読める、不思議な和歌です。
しかも、普通の和歌には掛詞はあっても1つですが、この歌には3つも使われています。
- なかきよ…『長き夜(ずっと夢を見ている)』、『長き世(長寿または長い世の中)』
- とおの(原文は、『とほの』)…『遠の(永遠に続く)』、『十の』
- なみのりふね…『波乗り船(宝船)』、『実り』、『不音(静かな)』
そのため、意味も3パターンありますが、私が好きな解釈は
『長い世の中の遠い戦(いくさ)のつらい記憶から、皆、目覚めなさい。
宝船にぶつかる音の音色は(世の中の状況は)、なんと素敵なことでしょう。』
という訳です。
これを書いた後、声に出して読みます。
言葉に魂(思い)を込めて、叶える力を強めるためです。
それから、折り紙を船の形に折りましょう。
七福神が乗る宝船を象徴しています。
七福神は7つの災難から逃れ、7つの幸せを運んでくれる人たちです。
作った船を枕の下に敷いて眠ると、素敵な初夢が見れるので、その初夢を秘密にして守っておくと、初夢が叶う、というわけですね。
今からお正月がやってくるのが待ち遠しくなるお話ですね。
え?
それでも悪い夢を見たらどうしたらいいの、って?
そんな時は、『縁起直し』をしましょう。
改めて気持ちを込めて宝船を作り、もう一度初夢を見るのです。
ぜひ素敵な初夢を見て、素晴らしい一年を迎えたいものですね。
早く 来い、来い
お正月~♪