アラジンと魔法のランプのサクッとあらすじ!
まずは、登場人物と簡単なあらすじを見ておこう♪
- アラジン…珍しいものを売って商売をしていた貧しい青年。
- おじいさん…アラジンに「魔法のランプを取ってきて」と頼む。
- 指輪の精…道案内ができる。
- ランプの精…人間を背中に乗せて空を飛んだり、様々な魔法を使って夢を叶えることが出来る。
- 道端で商売をしていたアラジンのところに、おじいさんがやってきて、「洞窟からランプを取ってきてくれたら欲しい物をやる」と言った。
- アラジンは洞窟の中で指輪の精とランプの精を呼び出すことに成功し、おじいさんの悪巧みを見破る。おじいさんにはランプを渡さず、自力で洞窟から脱出した。アラジンはランプの精の魔法の力を使い、宮殿を建て、船を造り、都で一番のお金持ちになる。美しいお嫁さんも迎えることが出来た。
- おじいさんはアラジンの奥さんをだまし、ランプを奪い取って、ランプの精を味方につける。そして、ランプの精の魔法を使って、アラジンの宮殿と奥さんを、遠くへ奪い去ってしまった。
- アラジンは指輪の精に道案内を頼み、自力で奥さんを救出する大冒険に出かける。
アラジンと魔法のランプのあらすじ!
むか~し、むかし。
アラジンという、貧しい青年がおりました。
彼は珍しい物を集めて転売する仕事をしておりましたが、あまり売れずに困っていました。
そんなある日のこと。
一人のおじいさんがアラジンのお店にやってきました。
お客様でしょうか?
いいえ。
おじいさんはアラジンに、『良いことを教えてくれる』というのです。
(なんだ、お客様じゃないのか…)
アラジンは、ちょっとがっかりしながら聞きました。
「いいことっていうのは、なんだい?」
「一つ頼みがあるんじゃ。聞いてくれたら、欲しいものは何でもやるぞ。」
アラジンは、ちょうど『もっと珍しい物を集めてくるために船が欲しい』と思っていた所でしたので、喜んで話に乗りました。
おじいさんに連れられてこられたのは、岩山のふもとです。
「この洞窟の中にあるランプを取ってくればいいんだね?」
「そうじゃ。」
洞窟、と言っても、入り口は、穴のようにまっすぐ下に伸びています。
階段もないし、底は真っ暗。
どのくらいの深さがあるのかさえ分かりません。
(うへぇ、気味が悪いなぁ。やっぱり止めようかなぁ。)
アラジンがためらっていると
「早くせんか!」
おじいさんに突き落とされてしまいました。
「ひどいじゃないか!
ロープを落として、僕をここから出してよぉっ!」
尻もちをついたアラジンはぷんぷん怒りました。が、投げ落とされたのはロープではなく、火のついた松明でした。
「ランプを取ってくるまではダメだ!
さぁ、早く行って取ってこんか!!」
(こんなに乱暴なことをするなら、船をくれる、って言うのも怪しいなぁ…)
アラジンは心配になりました。
が、こうなったら、おじいさんの言うとおりに洞窟の奥へ進むしかありません。
ところが…
こうもりが飛び立つ音に驚いたアラジンは、石につまずいて転び、うっかり、地面に松明を落としてしまいました。
たちまち、松明の火は消えてしまいました。
それでも、アラジンが暗闇に目をこらしていると…
アラジンの目に、ピカピカ光るエメラルドの指輪が飛び込んできました。
もっとよく見ようと、そででこすってみると…
なんということでしょう。
指輪から光が溢れ出し、突然、一人の大男が目の前に現れたではありませんか!
「誰だ、お前は!?」
びっくりしているアラジンに、大男はかしこまって言いました。
「私、指輪の精。
ご主人さまの命令、指輪の精、出来ることなら何でもする。」
アラジンは喜んで、ここから出してほしいとお願いしました。
しかし、残念なことに、指輪のせいには人を運ぶほどの力はないそうです。
「洞窟の中の道案内なら出来る」というので、ランプの所まで案内してもらいました。
指輪の精に手を引かれて、どんどん洞窟の奥深くにやってきたアラジン。
なんとそこには、たくさんの宝石を実らせた木が立ち並び、そのきらめきで辺りは明るくなっていました。
「うわぁ、こりゃ、すっごいぞ!
この宝石を持って帰れば、大金持ちになれるぞ!」
アラジンは、うはうは喜びましたが
「ご主人さま。この宝石、盗ってはダメ。
盗ると恐ろしいこと、起こります。」
指輪の精に止められてしまいました。
「それより、ランプ。あそこ。」
指輪の精が指す方を見ると、立派な祭壇の上に、古ぼけたランプが置かれてありました。
「おい、指輪の精。
このランプには、一体、どんな秘密があるんだ?」
「私、知らない。」
そっけなく答えられて、アラジンは、またもや、がっかりしました。
「…しっかし、汚いランプだなぁ。なんだって、じいさんは、これを欲しがるんだろう。
磨けば、少しはマシな物になるのかな?」
アラジンが試しにランプをそででこすってみると…
「うわぁっ!」
ピカァッ!
ランプからまばゆいほどの光が放たれたかと思いきや、ランプの先から、もくもくと煙が立ちのぼり…
「ほほ~いの、ほいっ♪」
またもや大男が現れました!
「なんだ、お前は!」
「私はランプの精。外に出して下さいまして、ありがとうございます。
なんなりと、ご命令を。」
「じゃあ、ランプの精よ。
お前は僕をここから出すことは出来るかい?」
「そんなことなぞ、朝飯前~」
アラジンは指輪の精を指輪の中に戻すと、ランプの精に外へ連れ出してもらうことにしました。
洞窟の外では、おじいさんが首を長くしてアラジンの帰りを待っていました。
「ランプさえ手に入れば、望むものは何でも手に入る。
…しかし、遅いな。
一体何やってんだ? アラジンは…」
すると…
ランプの精の手のひらに乗って、アラジンが洞窟から飛び出してきました。
そのまま、悠々と空高く舞い上がっていきます。
「やーい、やーい。
悔しかったら、ここまでおいでー!
ランプは僕のモンだーい!!」
アラジンはおじいさんにあっかんべーしながら言いました。
「何をこしゃくなー!
返せ!
ランプはワシのもんじゃぞっ!!」
おじいさんは両手をバタバタ、杖を振り乱しながら怒りましたが、後の祭り。
「そんなに欲しかったんなら、自分で行けば良かったじゃないか。」
アラジンはそう言って笑いました。
魔法のランプを手に入れたアラジンは、都に大きな屋敷を建ててもらいました。
そしてたくさんの船を造り、世界中の国と商売をして、あっという間に都で一番のお金持ちになりました。
やがて、都で一番美しい娘と結婚し、幸せな生活を暮らしました。
「うぅ、許せん。アラジンめ!
幸せを独り占めしおってからに…」
おじいさんは、悔しくてたまりません。
やがて、恐ろしい計画を企てました。
「奥さん、奥さん。」
窓辺にいたアラジンの奥さんに、おじいさんは話しかけました。
「古いランプはないですかな? 高く買い取りますぞ。」
「古いランプねぇ…
あるにはあるんだけど、主人が大切にしている物だから、主人に聞いてみないと。」
「では、ご主人に聞いては下さらんか?」
「今、出かけているの。」
「それは困った…
おぉ、そうじゃ。
この金のランプと交換しませんかな? これならご主人も、きっと喜びますぞ。」
アラジンの奥さんは、キラキラと輝く金色のランプを見て、すっかりだまされてしまいました。
「おじいさん。持ってきたわよ。」
ランプを持って外へ出てきた奥さん。
「じゃあ、さっさとよこしやがれ!」
おじいさんは無理やりランプをひったくると、ランプをこすりました。
「さぁ、ランプの精よ。出てこいっ!」
「きゃぁぁっ!」
家に帰る途中だったアラジンは、遠くから響いてきた奥さんの叫び声を聞いて、びっくり仰天!
慌てて家に向かって走り出しました。
アラジンが駆けつけた時には、ランプの精は、すっかりおじいさんの味方でした。
「ランプの精よ! この娘を宮殿ごと運び去るのじゃ!」
「はい、かしこまりました。」
「あっ、ランプの精…!
ボクの家をどうするつもりだっ!?」
アラジンは叫びましたが、ランプの精は答えません。代わりに、ランプの精の背中に乗って上空高く飛んでいるおじいさんが笑いながら言い返しました。
「奥さんと家は、ワシがもらったぞ! うはははは…」
「アラジン、助けてー!」
可哀想に、アラジンの奥さんは宮殿ごと、おじいさんに連れ去られて行ってしまいました。
「よしっ! 指輪の精の力を借りよう!」
アラジンは懐からあの時洞窟で拾った指輪を取り出して、こすりました。
「ご主人さま。今度はどんな御用で?」
「ランプの精が飛んで行った所まで、僕を案内しておくれ。」
指輪の精は、ランプの精とは違って空を飛ぶことは出来ません。
砂漠の中をてくてく歩いていく指輪の精の後ろを、アラジンも一生懸命ついていきました。
が、なにしろ砂漠の中の、灼熱の炎天下。アラジンは苦しくってたまりません。
「あとどのくらい?」
「もうちょいで着くよ。」
「もうちょいって、どのくらい?」
「そうね。あと10kmくらいよ。」
指輪の精の言葉に、アラジンはがっくり。
そのまま、倒れ込んでしまいました。
しかし、指輪の精は全く疲れていないようです。
「ご主人さま、どうなされましたか?」
「指輪の精。悪いけど、僕をおんぶしてくれない?」
「それは出来ない。ただ道案内するだけね。」
その頃、おじいさんはアラジンの奥さんの目の前にごちそうを並べて言いました。
「早く妻になると言え。そうすれば食べさせてやるぞ。」
「いやよ。誰がアンタなんかの妻に!
そのうち、アラジンが助けに来てくれるわ!」
おじいさんは奥さんの言葉を聞くと、ぐははは…と高笑いして言いました。
「アラジンなんか、来るわけがなかろう。
…ま、じきに、お前の方から
『妻にしてちょうだい』と頼むようになるわ。」
おじいさんは奥さんを牢屋にいれると、のんびりあくびをしながら寝室へ行きました。
そのときです!
物陰に忍びながら、アラジンがやってきたではありませんか!
「アラジン!」
喜ぶ奥さんに、アラジンは、「しー」っと人差し指を唇に当てる仕草をしました。
「鍵は、じいさんが持ってるのかい?」
「違うわ。これはランプの精の魔法なの。」
「じゃあ、じいさんが眠り込んだすきに、ランプをいただくとするか。」
おじいさんの寝室に行ってみると、ベッドサイドのテープルの上に、ランプが置かれていました。
アラジンが素早くランプを盗ると、おじいさんは、ぱっと目を覚ましました。
「あっ! アラジン!!
待て、アラジン!!」
「じいさん。もう悪あがきしても無駄さ!」
アラジンは、にぃっと笑うと、ランプをこすりました。
「ランプの精よ。
お前の魔法で作った、全ての物を消し去っておくれ!」
アラジンが叫んだ途端に、宮殿ごと消えてしまいました。
「じいさん。これにこりたら、もう真面目に働くことだね。
…じゃ。僕たちを都に連れて帰っておくれ。」
「ワシも一緒に…
あぁ、置いてかないでくれ! 頼む…」
パジャマ姿で泣き叫ぶおじいさんをおいて、アラジンとアラジンの奥さんは、ランプの精の背中に乗って都に向かって飛び立ちました。
「これからは、僕たちも、魔法の力を借りずに生きていこうね。」
こうしてアラジンは、今度は魔法の力を借りずに商売をして、船を買ったそうです。
アラジンと魔法のランプのまとめ、教訓と感想!
『アラジンと魔法のランプ』と聞いた時、私はてっきり、ディズニー映画の『アラジン』のお話かと思ってしまいました。
アラジンとジャスミン王女が魔法のじゅうたんに乗って『A Whole New World(見たことのない新しい世界で)』を歌うシーンは、思い出すだけで胸キュンもの!
そのシーンが見れるのか…
と思っていたので、まるっきり違うこちらのお話と初めて出会った時は、すっかり驚いて、ぽかんとしてしまいました。
実は、私達が知っている『アラジン』は、こちらの『アラジンと魔法のランプ』のお話をもとに、ディズニーが1922年に創作したものなのです。
また、『ハクション大魔王』のお話の原典も、こちらのお話だというから驚きです!
所変われば品変わる、とは言いますが…
あまりの違いっぷりに、度肝を抜かれてしまいました。
『アラジンと魔法のランプ』はアラビアのお話です。
『アラビアン・ナイト(千夜一夜物語)』に収録された中でも、ポピュラーなお話、という説もありましたが、1984年に、ムフシン・マハディーの研究によって否定されています。ムフシン・マハディーによると、『アラビアン・ナイト(千夜一夜物語)』の原典には、こちらのお話は存在しないというのです。
『アラビアン・ナイト(千夜一夜物語)』自体、作者不明ですが、アラビアに伝わっていた民話を何百も使って描かれたものだ、ということは分かっています。
しかし、そこにも載っていないとなると…
いよいよもって、作者不明。
そもそも、民話なのかどうかさえ分からずじまいになってしまいました。
とにもかくにも、『アラジンと魔法のランプ』は、魔法を使うことについて、すごく考えさせられるお話です。
どんなに一生懸命働いても、どうにも出来ない貧しい現実。
そこから、魔法の力で一気に抜け出すことが出来たら、どんなに素晴らしいことでしょう。
誰でも一度は、夢見てしまいますよね。
しかし、魔法の力を上手に使いこなすのは、なかなか難しいようです。
白雪姫の悪いお妃様もそうですが、分不相応の力を手に入れると、悪い性格が出てきてしまう、というのが、人間の哀しい性なのかもしれません。
その点、『アラジンと魔法のランプ』のアラジンはすごいですよね。
最期は宮殿どころか、それまで魔法の力で得たものを全て帳消しにして
「これからは、僕たちも、魔法の力を借りずに生きていこうね。」
と決意し、本当に自分の力だけで船を持てるほどの富を築くのですから。
私だったら、おじいさんに仕返しするために宮殿しか消さないでしょう。
そして、これからは悪い奴にランプを取られないように十分気をつけて、自分だけではなく世界中のたくさんの貧しい人々の幸せのために魔法を使うと思います。なにせ、魔法を使える上限はありませんから、じっくり考えて、なんだってお願いすることが出来るのです。
アラジンは
「これ以上使っていたら、自分たちも悪い本性が出てきてしまうかも知れない」
という危機感を抱いたのでしょうか。
それとも、指輪の精に道案内を頼んで、自力で奥さんを助け出す、命がけの大冒険をしたアラジンは
「魔法で簡単に叶えてしまうよりも、汗水たらして得られた成果のほうが何倍も嬉しい」
ということを実感したのでしょうか。
どちらにせよ、それはそれで、素晴らしい勇気のある決断だな、と思いました。
『アラジンと魔法の精』は、冒険物語の好きな子にぴったりのハラハラどきどきな物語です。
でも、ランプの精ってご主人さまの願いを魔法で叶えるために存在するんだよね。
「もう、魔法を使わない!」
ってご主人様が決めちゃったら、ランプの精の存在価値って無くなっちゃうんじゃないかなぁ?
ディズニーの『アラジン』とは違って、『ランプの精をランプから開放してあげる』という結末もないみたいだし…