おかげ参りのサクッとあらすじ!
まずは、登場人物と簡単なあらすじを見ておこう♪
- お千代…呉服屋の娘。おかげ参りに行きたがる。
- おさん…お千代の愛犬。おもしろい顔をしている。お千代の代わりに、大活躍!
- 与七…お千代の隣の染物屋の跡取り息子。お千代に片思いしている。
- お千代は、どうしてもお伊勢さんの『おかげ参り』に行きたくなり、与七を誘って、子犬のおさんも連れて旅立つ。
- 一度にたくさんの物を食べすぎてお腹を壊したお千代は旅をリタイア。与七もリタイアしたかったが、お千代の代わりにかんざしを持たされ、おさんにけしかけられて大阪にたどり着く。
- 道中、与七は間違って野良犬のしっぽをふんでしまい、野良犬の群れにおいかけられるハメになる。
- 与七のピンチを救ってくれたのは、子犬のおさんだった!野良犬も従えて、一行はとうとうお伊勢さんにたどり着く。故郷に帰った与七は、お千代と夫婦になり、商売も繁盛した。
おかげ参りのあらすじ!
むか~し。
阿波の徳島にある呉服屋さんに、お千代という一人娘がいました。
お千代は『おさん』という、へんてこりんな顔の子犬を飼っていました。
呉服屋さんの隣の染物屋さんには、与七という跡取り息子がいました。
与七はお千代に、片思いをしていました。
今年は、60年に1度の『お伊勢さんのおかげ参り』の年。
窓の外では
「おかげじゃ、おかげじゃ」
と叫びながら、大勢の人がお伊勢さんまでの旅を楽しんでいます。
お千代も、お札をもらいに、お伊勢さんまで旅をしてみたくてたまらなくなりました。
とは言え、女性の一人旅など、両親がとうてい許してくれるはずがありません。
そこでお千代は、与七を誘い、おさんと一緒に旅に出ることを思いつきました。
しかし与七は太っていて、歩くのは苦手。おまけに、大の犬嫌いです。
一度は断りましたが、お千代に
「あっ、そう。私を連れて行ってくれたら、与七さんのお嫁さんになってもいいと思ったのに」
と言われ、しぶしぶ一緒に行くことにしました。
次の日、2人は両親の許可を得て、いざ、おかげ参りに出発!
憂うつな気分の与七に対して、お千代は、ルンルン浮かれ気分。
見るもの、聞くもの、全てが物珍しくてたまりません。
あんまりにも浮かれすぎて…
あれも、これもと、手当たり次第に色んな物を食べたお千代は、お腹を壊して歩けなくなってしまいました。
「あんなぁ、お千代ちゃん。もう旅は無理じゃ。帰ろ、帰ろ」
これ幸いとばかりに、うながす与七。
けれどもお千代は、嫌だ、嫌だと、だだをこねます。
そして
「このかんざしを私と思って、お伊勢さんのお札をもらってきて」
なーんて言い残し、一人で帰ってしまったではありませんか!
「わしも倒れて、かごに乗って帰ろうっと」
と与七は思いましたが、おさんにギャンギャンけしかけられ、とうとう、大阪行きの船に乗ってしまいました。
大阪に着くと、今度は、身動きできないほどの大行列に飲み込まれました。
「はぁ~、もう歩かれへん。
そうや、どこかそのへんの人に頼んで、宿で待っていよう」
与七は、またもや名案を思いつきました。
ところが、大変!
おさんが、与七の懐からお千代のかんざしを抜き取り、お伊勢さんに向かって走っていくではありませんか!
大好きな人から預かった、大切なかんざしです。
失くすわけには行きません。
おさんを夢中で追いかけているうちに、与七は誤って、寝ていた野良犬のしっぽを踏んでしまいました。
野良犬は怒って、どんどん数を増やしながら追いかけてきます!
大慌てで与七が逃げていると
どっしーん!
商人にぶつかり、そのはずみで、商人がひいていた台車に飛び乗ってしまったではありませんか!
与七を乗せた台車は、あれよ、あれよという間に坂を下り落ち
どっしーん!
とうとう、木にぶつかって止まりました。
野良犬の群れがきばをむいて、ぐるりと与七を取り囲みます。
「あ~、もうダメだ!!」
と、与七が観念した、その時です!
かんざしをくわえた、おさんが現れました。
「おさーん!」
わらにもすがる思いで与七が助けを求めると、おさんはぷりぷり、しっぽをふりました。
すると、どうしたことでしょう。
野良犬たちも、いっせいにしっぽを振り始めたではありませんか。
おさんが、くわぁ…とあくびをすると、その顔があんまり面白かったので、野良犬たちは大笑い。
いつしか、おさんと野良犬たちは、すっかり仲良くなってしまいました。
そうして、おさんを先頭に、野良犬たちは与七が乗った台車をゴロゴロ転がしながら走り出し、とうとう一行はお伊勢さんにたどり着きました。
与七たち一行を見ると、お伊勢参りに来ていた旅人たちは、びっくり仰天!
「あんな子犬が、野良犬を従えるとは」
「これも、お伊勢さんのおかげじゃ!」
おさんに助けてもらい、お伊勢さんまで連れてきてもらった与七も、すっかり、おさんのことが大好きになりました。
その後、故郷に帰った与七は、お千代と結婚し、染物屋と呉服屋を合併して、店は大繁盛しましたとさ。
おかげ参りのまとめ、教訓と感想!
『おかげ参り』は、三重県に伝わる昔話で、与七とおさんの、ハチャメチャ冒険物語です。
江戸時代に流行した『お陰参り(おかげまいり)』は、またの名を、『お陰詣で(おかげもうで)』とも言います。
60年ごと(これを『おかげ年』と言います)に、3回開催されました。
当時、庶民、特に農民が旅をすること(移動すること)は、固く禁じられていました。しかし、この時ばかりは違いました。おかげ参りの通行手形を発行してもらえれば、自由に旅に行けるのです。そのため、一度に数百万人もの人たちが、伊勢神宮までの旅を楽しみました。
『お蔭参りが抜け参り』という言葉もありますが、奉公人が主人の許しなくお伊勢参りへの旅に出たり、子どもが親に無断で旅立っても、お伊勢さんのお土産さえ買ってくれば許してもらえました。これが『お土産』の習慣の起源、とも言われています。
お伊勢さんは、当時、流行の発信地でした。最新ファッション(織物の柄)、農具、音楽や芸能が、おかげ参りを通して各地に広まっていきました。
大阪をはじめとして、江戸、名古屋、東北地方、九州、遠くは岩手県からも、人々は歩いたり船に乗ったりして伊勢神宮を目指しました。なんと、岩手県からだと100日間もかかった!というから、驚きですよね。
そんなに歩き続けるなんて、考えただけでゾッとします。
それだけ旅を続けると宿泊費やご飯代だけでも、莫大なお金が必要…かと思いきや、おかげ参りは『信心の旅』なので、沿道に住む人々が『施し』として、何かと援助してくれました。お金がなくても気楽に旅を楽しめた、というのが、おかげ参りの大きな特徴です。
伊勢神宮では天照大神(アマテラス オオミカミ)をまつっています。
天照大神は、商人にとっては商売繁盛の守り神。
この物語のラストで、与七とお千代の家が商売繁盛したのも、うなづけますね。
また、天照大神は、農民の間では五穀豊穣の守り神として、あがめられていました。
おさん、子犬なのに、やるなぁ。
やる気のない与七さんのどこに『やる気スイッチ』があるのか、も知ってるし、凶暴な野良犬とも仲良くなっちゃうなんて。すごいや。
与七さんとお千代さんが幸せになれたのは、おさんのおかげだね。
これぞまさしく、『おかげ』参り♪ なーんちゃって(笑)