さまよえるオランダ人のサクッとあらすじ!
まずは、登場人物と簡単なあらすじを見ておこう♪
- オランダ人の船長…おきてを破り、復活祭の日に出帆しようとする。
- オランダ船の船員…神の怒りに触れるのを恐れ、船長を引き留めようとする。
- 港の人々…オランダ船に起きた事件を目撃する。
- 『復活祭の日には船を出してはいけない』というおきてがあった。しかし、『航海の名人』と呼ばれたオランダ人の船長は、皆が引き留めようとする言葉にも耳を貸さない。
- いざ出帆しようとしたその時、船に雷が落ち、乗員は全員、石のように固まってしまった。街の人達が騒然として見つめる中、誰も操っていないはずのオランダ船は、静かに港を後にした。
- 何年か後、喜望峰のはるか沖合いに、幽霊船と化したこの船が出没するようになった。この船を目撃してしまった船は、ことごとく沈んでしまった。幽霊船と出会ったある船長は、とっさに額に十字を切って神に救いを求めた。
- 祈りが神に通じたのか、その船だけは沈められずにすんだ。また、この幽霊船は7年に一度、港に帰ってくる、という噂もある。幽霊船から手紙を受け取った船乗りは、その手紙をすぐに釘で帆柱に打たないと呪われる、という話だ。
さまよえるオランダ人のあらすじ!
むか~し、むかし。
オランダで起きたお話です。
「今日は何が何でも出帆するぞ」
ある日、『航海の名人』と呼ばれたオランダ人の船長は決心しました。
もう何日も春の嵐が続き、足止めされて、彼はイライラしていたのです。
それに、こういう皆が働かないときほど、お金儲けのチャンスなのです。
しかし、水夫たちは船長を止めました。
折しも、ちょうどその日は、イエス・キリスト様が復活して昇天なさったのを記念する『復活祭の日』だったのです。
『復活祭の日は、絶対に船を出してはいけない』というおきてがありました。
破ったものには恐ろしいことが起きるという言い伝えです。
ところが、神の怒りに触れるのを恐れる船員たちに、船長はカラカラと笑って言いました。
「お前たち。一生遊んで暮らせる金が欲しければ、ワシの言うことを聞け!
神の教えなんぞ守っていたら、金輪際、楽な生活は出来んぞ!!」
教会の鐘の音とコーラスは、船長と水夫たちの欲深い行いを止めるかのように鳴り響き続けています。
「おーい、あんた、本当に船を出す気なのか?」
「復活祭の鐘の音が聞こえないのか!?」
街の人達も、必死でオランダ人の船長を止めようとしました。
「神に背くと、必ず後悔するぞ! 二度と港を見られんからな!!」
しかし、お金に目がくらんだオランダ人の船長は、人々の言い伝えを平気で踏みにじろうとしました。
と…
その時です!
ゴロゴロゴロゴロ…!!
突然、稲妻の光がオランダ船を包み込んだかと思うと、船員たちは皆、金縛りにあったかのように、身動きひとつできなくなってしまったではありませんか。
オランダ船に、何か恐ろしいことが起きた!
街の人々は騒然としながら港に集まりました。
皆が見ている中、誰も操っていないはずのオランダ船は、静かに港を出ていきました。
ロウ人形のように固まってしまった乗員達を乗せたままで…
「神の裁きがくだされたのだ!」
街の人々は、あぁ…と嘆いて、額に十字を切りました。
それから、何年も月日が流れました。
「あ… あれは…
幽霊船だっ!!」
アフリカの一番南にある喜望峰(きぼうほう)のはるか沖を走っていた船の老水夫は、震えながら言いました。
なんと、復活祭の日に出帆しようとしたあの船は、幽霊船になって、こんな所までたどりついていたのです!
甲板には、固まったままガイコツになった船長がパイプを吹かし、ガイコツの水夫たちが何人も乗っていました。
しかし、船長も他の水夫たちも、老水夫を『臆病者』とバカにして笑うばかり。
誰一人、信じるものはおりませんでした。
次の日。
一瞬の嵐でその船は沈み、目撃した、あの老水夫だけを残して、全員死んでしまいました。
それから、幽霊船は喜望峰の近くに何度も現れました。
恐ろしいことに、幽霊船を見てしまった船は皆、ことごとく沈んでいったのです。
ある日、またしても幽霊船が現れました。
「おお… 神よ…
助けてくれ! 神よ!」
その船の船長は、とっさに神に救いを求めて、額に十字を切りました。
その祈りが通じたのでしょうか。
何事もなく、幽霊船は通り過ぎていきました。
幽霊船を見て助かったのは、この船だけだったそうです。
また、この幽霊船にまつわる、こんな噂もあります。
この幽霊船は、7年に一度、港に戻ってくるというのです。
幽霊船から、誰も乗っていないボートが、ぎいぎいとオールの音だけをきしませながら岸壁に向かって滑ってきます。
ぼうっと片腕が現れ
「頼むよ…」
と、手紙を差し出すのだそうです。
受け取った手紙は、すぐに帆柱に釘で打ちつけなければいけません。
そうしないと必ず不幸がもたらされるそうです。
片腕は釘で打ち付けられたのを見届けると、着物を着た骨になり、みるみるうちに、ぼろぼろと風に崩れて消えていくそうです。
この哀れな、オランダ人の船長は、いつになったら神に許してもらえるのでしょう。
いつまで、あてどもなく大海原をさまよい続けなければいけないのでしょう。
それとも、もう許されて、今はただ、海の果てで、安らかに眠っているのでしょうか。
それは誰にも分かりません。
さまよえるオランダ人のまとめ、教訓と感想!
神様や仏様は、人種も、地位も関係なく、全ての人を愛し、困った時に救いの手を差し伸べてくださるもの。
私は、そう信じていました。
このお話を読むまでは…
このオランダ人の船長が、何の悪さをしたと言うのでしょう。
誰かを傷つけたわけでもないし、お金を盗んだわけでもありません。
『復活祭の日におきてを破って船を出した』
ただ、それだけで、船長はおろか、船長を止めていたはずの船員たちも、雷で即死してしまいました。
誰も操っていないのに船が出帆したのは、もしかしたら、雷に当たる直前に、船員が船のアクセルを踏んでいたせいかもしれません。
ロウのように固められてしまった乗員たちの体は、長いこと雨風にさらされ、可哀想にガイコツになってしまいました。
しかし、もっと意味が分からないのは、喜望峰にいた他の船です。
その幽霊船を見ただけで、ことごとく船を沈められてしまった、なんて、とばっちりもいいところですよね。
オランダで起きたお話なのに、南アフリカの人達が、あまりにも可哀想です。
『喜望峰』で、パッとひらめいたのは、大航海時代に、最初にアメリカ大陸を発見した、コロンブスです。
その侵略の図が現れているのかな?
と思いましたが、コロンブスはオランダ人ではなく、イタリア人ですから、違う話みたいですね。
それにしても、一体、どうしてこんなことが起きてしまったのでしょう。
そもそも『復活祭の日』って一体、何?
仏教徒の私には実感できなかったので、ちょっと調べてみました。
十字架にかけられて死んだイエス・キリスト様は、死んでから3日後に復活を果たしました。
『復活祭』は、それを讃えるお祭りで、キリスト教徒にとって、最も神聖なるお祭りなのだそうです。
ただ、どうして『復活祭の日に出帆すると、神の裁きが下るのか』については分かりませんでした。
クリスチャンの方なら分かるのかな?
ぜひ説明して欲しいな、と思いました。
このお話は、欧米に広く伝わる昔話で、ドイツの作曲家、リヒャルト・ワーグナーが作曲してオペラにもなっています。
なんとも不思議で、恐ろしいお話ですよね。
幽霊船って、本当にあるのかな。
見ただけで命を取られてしまうなんて、怖いよね。
ぶるぶるぶる…