年神様(としがみさま)のサクッとあらすじ!
まずは、登場人物と簡単なあらすじを見ておこう♪
- 年神様(としがみさま)…みんなに毎年一歳ずつ年齢を配るのが役目。気弱で優しい神様
- 村外れのおじいさんとおばあさん…年を取らないよう、年神様から隠れる
- 今年も年越しの晩がやってきた。年神さまは、みんなにブーブー文句を言われながらも、一つずつ年を取らせなければいけない。
- しかし、村外れのおじいさんとおばあさんは、竹やぶに隠れてしまう。
- なかなか2人を見つけられない年神さまは、雲の上から2人の『年』の札を捨ててしまう。
- お札はぴらぴら飛んでいき…おじいさんとおばあさんの、それぞれのおでこに、ぺったんこ。2人は年を取ってしまった。
年神様のあらすじ!
むか~し、むかし。
『年神さま(としがみさま)』という神様がおりました。
年越しに一軒一軒家を回り『年』を配るのが、年神さまの役目です。
おでこに、ぴたっと『一歳』という札を貼ると、その人が一歳年を取るのです。
「また今年も、年の晩が近づいてきた…」
年神さまは悲しそうにそう言って、ため息をつきました。
年をあげに行くと、
『いらん!いらん! 年なんか、いらんっ!』
と、口々に文句を言われてしまうのです。
優しい年神さまは、胃が痛くなってしまうほどでした。
村外れのおじいさんとおばあさんも、年を取りたくなくてたまりません。
「年は十分すぎるほどもらったで、もう年はいらん…
若い頃は、良かったのう。」
なんとか年を取らずにすむものか…と、2人は、毎日一生懸命、考えていました。
さて。
いよいよ、年越しの晩がやって来ました。
年神さまは仕方なく、人々に年を配る準備を始めました。
祭壇に行って、年神さまが名前を読み上げると、その人の分のお札が、ぴらぴらぴら~っと一枚ずつ飛んで、袋に入っていくのです。
ちょうどその頃、村外れのおじいさんとおばあさんは家を抜け出しました。
なんと、除夜の鐘が鳴って年神さまが行ってしまうまで、竹やぶに身を隠すことにしたのです!
「この年になって、かくれんぼの真似するとは思わんかったです♪」
と、おばあさんは楽しそう。
「そうじゃのう。遠い昔に、やったっきりじゃ。」
おじいさんも、なんだか楽しくなってきました。
年神さまは、ある家の中で困っていました。
「困りますよ。まだ嫁にもいっとらんのに、年ばっかり取って」
と娘さんがなげいているのです。
お父さんは
「どうしても、って言うんなら、わしらが代わりに年をもらおう!」
とまで言います。
「そうはいかぬ。年は、一人に一つずつ、と決まっておるんじゃ。」
年神様がみんなに年を取らせると、娘さんは
「ますます、嫁に行きにくくなる…」
と泣き出すし、お父さんは
「わしらが、こんなに頼んどるのに! あんた、それでも神様か!!」
と両腕を振り上げて怒り、年神さまは家から逃げ出しました。
しかし、年神さまを嫌がる人々ばかりではありませんでした。
ありがたく思ってくれる、老夫婦。
「わーい、年神さまだーい♪ 年、おくれ~♪」
と、飛び跳ねて喜ぶ子ども。
年を取り、立ち上がる赤ん坊もいました。
気が滅入っていた年神さまは嬉しくなって、少し自信をつけました。
「さぁ、残りは、村外れのじいさんと、ばあさんだけじゃ~♪」
しかし…
「困った…
年の晩に、家を空けるとは…!!」
さすがの年神さまも、びっくり仰天! さぁ、大変!!
除夜が鳴る前に、2人にお札を貼らないと、2人が年を取らない、ということになってしまいます。
なんとかして、お役目を果たさなければいけません!
年神さまは慌てて雲に乗り、2人を探し回りました。
しかし、おじいさんとおばあさんは、なかなか見つかりません。
「困ったのう。
わしは神様じゃし、誰かに頼るわけにもいかん!」
すっかり途方に暮れた年神さまは、とうとう、雲の上から2人のお札をこっそり捨てて、帰って行ってしまいました。
ぴらぴらぴら~
二枚のお札は飛んでいき…
「あれぇ?
ばあさん、何か降ってくるぞ?」
「そうですね。降ってきますね」
竹やぶに隠れていたおじいさんとおばあさんが、不思議そうに見上げていると
ぺったん!
ぺったん!
お札は、それぞれのおでこに、くっついてしまいました。
「とし…!」
「と…し…!!」
こうして、おじいさんとおばあさんは、やっぱり今年もひとつ、年を取ってしまったのでした。
さて。
除夜の鐘が鳴りました。
温かい家で年越しそばをすすりながら、おばあさんは、なんだか、ちょっぴり嬉しそう。
竹やぶでおじいさんとかくれんぼ出来て、若返った気分を味わえ、本当に楽しかったんですって。
微笑むおばあさんを見て、おじいさんも、楽しく年を越しました。
一方、年神さまは…
「年を捨ててしまうとは…」
ふぅ、とためいきをついておりましたとさ。
年神様のまとめ、教訓と感想!
これは、岡山県に伝わる昔話です。
現在では年齢は誕生日になると一つ増えますが、昔は違う計算方法をしました。
それが、この昔話のもとになっている、『数え年』の数え方です。
『数え年』の計算方法では、生まれた年を『一歳』とし、1月1日を迎えるごとに1つずつ年を取っていきます。
たとえば、大晦日(12月31日)に生まれた赤ちゃんは、もうその時点で1歳。朝が来ると2歳になる、というのですから、面白いですよね。
えっ、『満◎歳』という言い方が、今もあるでしょ、って?
確かに、1月1日を起点とするのは同じですね。
しかし、あちらでは、生まれた年は『0歳』とカウントするのが、『数え年』と大きく違う点です。
それにしても、人間って面白い生き物ですよね。
若いうちは
「早く大人になりたい!」
と大人になることに憧れ、出来ることが増えるたびに喜びます。
それなのに、40歳も半ばになってくると(早いうちは30歳くらいから)、今度は
「年老いたくない…」
と逆のことを言い出したあげく、しまいには
「誕生日が来るたびに、1歳ずつ若返っていけばいいのに…」
と、無茶なお願いまでしてしまうのですから…(笑)
年神さまも、たまったものじゃありませんよね。
どんなに逃げても、年は取ってしまうもの。
だったら、「やだやだ」なんて文句を言って年神さまを困らせたりしないで
「今年も新しい年を迎えさせてもらえるなんて。ありがたや…」
と感謝の気持ちで新年を迎えるほうが、神さまも私達も、お互いに喜んでお正月を迎えられますね。
村外れのおじいさんとおばあさん、すっごく仲が良いね。
作戦に失敗しても、気にするどころか、笑ってお正月を迎えられるんだもん。
なんだか、ちっちゃな、いたずらっこみたいだね(笑)