七夕さまのサクッとあらすじ!
まずは、登場人物と簡単なあらすじを見ておこう♪
- ほうろく売りの男…水浴びをしていた娘に一目惚れをしてしまう。
- 水浴びをしていた娘…実は天女。男に着物を盗まれて天に帰れなくなり、お嫁さんにさせられてしまう。
- 娘の父と母…男を嫌い、ついには天の川の向こう側に流してしまう。
- ほうろく売りの男が一休みをしようと湖にやってくると、向こうで女性たちが水浴びをしていた。松の枝には、女性が脱いだ着物がかかっており、男はそれを盗んでしまう。しかも、羽衣が無くて天に帰れなくなった娘を、勝手に嫁にしてしまう。
- 男との間に身ごもった赤ちゃんをあやしている時、娘は偶然、盗まれた自分の着物を発見する。立ち去ろうとした時、男に見つかってしまった。娘は自分の正体を明かし、自分を訪ねて天の国に会いに来たければ、千足のわらじを編んで土に埋めるように言い残す。
- 男は999足のわらじを編んで土に埋めた。1足分、竹が伸びなかったが、可哀想に思ったお嫁さんに助けられて天の国に行く。しかし両親は断じて男を認めない。娘の父は男に無理難題を押し付けるが、娘が知恵を与えて男を助けてしまう。
- 娘の父は、男にほうびだと嘘をついて、『瓜畑に行って瓜を縦に切れ』と言う。男が切った途端、瓜から大量の水が流れ出して天の川になり、男を押し流した。娘は「毎月7日に会おう」と言うが、男は「7月7日に会おう」と言われたと勘違いする。以来、二人は7月7日の七夕にしか会えなくなる。
七夕さまのあらすじ!
むか~し。
「ほうろく~、ほうろく~。ほうろくは、いらんかね~?」
肩に天秤棒をかついで、ほうろく(お茶の葉や豆、塩、胡麻などを炒る時に使う素焼きの平たい土鍋)を村々に売り歩く若者がおりました。
ある日、男が一休みしようと湖のそばへやってくると…
遠くの方で、娘たちが水浴びをしているのを見かけました。
「はっ、はっ、はっ(笑)
気持ちよさそうじゃのう。」
ふと目の前を見ると、松の枝に着物がかけてあります。
なんて美しくて珍しい着物でしょう。
なんとも言えない良い香りも漂ってきます。
男は思わず、一人分の着物を盗んでいってしまいました。
その日の夕方。
男が仕事を終えて、昼間来た湖のところを通りかかると…
娘が一人、裸のまま両手で顔をおおって、しくしく泣いているではありませんか。
「娘さん。一体、どうしたのかね?」
男はたずねました。
「水浴びをしているうちに、着物を盗まれてしまいました…」
「えぇっ!」
男は急いで天秤棒の奥の方に盗んだ着物を押し込めました。
「あの着物がなくては、私は帰ることが出来ないのです。」
「帰れない!?」
「はい…」
男は着物を返そうかとも思いました。
しかし…
目の前の娘の、美しいこと。
男はすっかり一目惚れをし、娘に言いました。
「帰れねぇんなら、オラの家へ来て、一緒に暮らしてくれ」
こうして男は娘をお嫁さんにしてしまいました。
男が娘にとても優しく接したので、いつしか娘も、男のことを好きになっていきました。
赤ちゃんも生まれ、親子三人、仲良く暮らしておりました。
ある日のことです。
男が留守の間、嫁様は赤ちゃんと一緒に寝転んで、子守唄を歌っていました。
ふと見上げると、天井の梁から何か包みがぶら下がっています。
「はて、何の包みだろう?」
不思議に思った嫁様は、はしごをかけて包みを降ろしました。
中を開いて見てみると…
「まっ!
あの人は、私の着物を盗んで、今まで隠していたんだわ!!」
嫁様は唇をかみました。
でも、あれからずっと優しくしてくれている男の姿を思うと、どうしても憎みきれません。
嫁様は素早く着物を着替えると、子どもを抱えて外へ飛び出しました。
すると…
「お前! 何をしとる!?」
ちょうど仕事から帰ってきた男に見つかってしまいました。
「私は、本当は天女です。
羽衣を盗られてしまったのでここで暮らしていましたが、羽衣が見つかった今、天の国へ帰らなければいけません。」
しっかりと赤ちゃんを抱いたまま、嫁様はふわりと宙へ舞い上がりました。
「待ってくれー!
お前にいてもらいたいから、着物を隠したんじゃぁー!!
戻ってくれー!!」
男は叫び、慌てて嫁様を追いかけました。
「私に会いたかったら、わらじを千足編んで、竹の根本に植えて下さい。
竹が伸びたら、その竹を伝って、昇ってきて下さい。」
嫁様はそう言い残して天上に行ってしまいました。
その夜から、男は、一心不乱にわらじを編み始めました。
毎日、毎日、朝から晩までわらじを作り続けて、やっと999足のわらじが出来上がりました。
嫁様に会いたくて会いたくて仕方のなかった男は、もう我慢できなくなり、それを竹やぶに埋めました。
その途端…
「うぉぉぉぉっ!」
男の体を押し上げるように、竹がぐんぐん天に向かって伸び始めました。
「おお!
嫁様の言うたとおりじゃ!
これで天の国へ行けるぞぉ!!」
猛スピードで伸びる竹にしっかりとつかまって、男は楽しそうに叫びました。
ところが…
あと少しで天の国へ着くというところで、竹はぴたりと伸びなくなってしまいました。
「おーい!
おーい!」
編み物をしていた娘は、叫び声を聞きつけ、御殿から下をのぞきました。
見ると、男が泣きそうな顔で片手を振っているではありませんか。
「まぁ…!」
娘には、男がわらじを一足編んでいないことが、すぐに分かりました。
しかし、男を可哀想に思い、手を差し伸べてひっぱり上げてあげました。
「お父様。お母様。
この人がその子の父親です。
今、下の国から、この国を訪ねてくれたのです。」
嫁様は男を紹介しました。
しかし、お父様とお母様は、自分たちの許しを得ないまま、勝手に娘を嫁にしてしまった男を断じて許しませんでした。
そうしてお父様は、男に、わざと出来ないような仕事を言いつけるようになりました。
その日は、井戸からざるで水をくんでくるように言いつけられました。
男が途方に暮れていると、嫁様がざるに油紙を敷いてくれました。
男が喜んで、お父様のところへ水を持っていくと、お父様は、うーんとうなりました。
「人間にしては、なかなか知恵があるわい。
…よし。
ほうびに、瓜をやろう。畑へ行って、好きなだけ食べるが良い。
ただし!
瓜は縦斬りにして。な?」
男は喜んで、さっそく瓜畑に行きました。
「珍しいこともあったもんだ。
あの御方が、ほうびをくださるなんて」
男が瓜を縦斬りにした、その途端!
「あぁっ!」
水が洪水のようにあふれ出しました。
天の国では、決して瓜を縦斬りにしてはならなかったのです!!
瓜からほとばしる水は、天の川となって男の体を押し流しました。
濁流の中を、なすすべもなく流されていく男を見て、お母様とお父様はほくそ笑みました。
驚いた嫁様は、大声で叫びました。
「7日!
7日に、会いに来て下さーーいっ!」
しかし、慌てている男には、嫁様が何を言っているのか分かりません。
「なに? 7が、どうした!?」
「7日! 7日ですよー!!」
その日から嫁様は、毎月7日に天の川のほとりに出て、男が来るのを待っていました。
ところが、いくら待っても男はやってきません。
そうして、7月7日のこと。
ようやく男が天の川にやってきました。
嫁様がしきりに「7日」「7日」と言ったのを、男は「7月7日」だと聞き違えてしまったのです。
こうして二人は年に一度、7月7日にしか会えなくなってしまいました。
これが『七夕さま』のはじまりです。
七夕さまのまとめ、教訓と感想!
『七夕』は中国が起源で、『七夕伝説』には、いろいろなパターンがあります。
上記は、そのひとつ。ですが…
現代の日本人から見ると、かなりショッキングな内容ですよね。
着物がいかに珍しかったか、いい臭いがするか、を述べられても、女性の着物を下着ごと盗むなんて、ただの変質者です。
湖から上がって、自分の着物がないことを知ったとき、娘は、どれほど愕然としたことでしょう。
天の羽衣をまとって帰っていく姉妹たちから、一人、置いてきぼりにされた時、どんなに絶望したことでしょう。
娘の気持ちを思うと、可哀想で涙が出てきますよね。
なのに、盗んだ男は、なおも素知らぬ顔をして娘に近づきます。
そして
「帰れないなら、オラの嫁になれ」
と、あろうことか、自分の家に連れ去ってしまいます。
強盗だけでは物足りず、拉致監禁までしてしまったのです。
『親切にされて娘も恋心を抱き始めた』って、本当でしょうか?
洗脳されただけなのではないか、と一瞬思ってしまいました。
その洗脳も、自分の着物を盗んだ犯人が男だった、と知って解けかかるのですが
『憎みきれない、憎い人』
止まりで終わってしまいます。(まるで、演歌によくある歌詞のようですね)
「わらじを千足編んで、竹が生えたら昇ってきて」
と男に伝えたのは、もしかしたら、お嫁さんなりの
「そんなの出来るわけないけどね。フンッ!」
という仕返しだったのかもしれません。
しかし、男はお嫁さんを信じて、昼夜を惜しまず、999足のわらじを編み上げました。
ここまでは
「おぉ、よく頑張ったね。改心したかい?」
とほめてあげたくなりますが…
あろうことか、あと1足、足りないまま、天の国へ昇ろうとしてしまいます。
なんてツメが甘くて横着者な男でしょう。
案の定、1足分、竹は伸びきれなくて自力では天の国に行けなくなってしまいます。
お嫁さんにひっぱりあげてもらい、挙句の果てには、お父様から言いつけられた仕事さえ一人では出来ずに、お嫁さんから教えてもらう始末。
しかもそれを、さも自分の手柄のようにお父様に報告します。
まさに、ダメ男の典型ですね。
お嫁さんが、可哀想で仕方がありません。
「貴方、悪い男にだまされてるよ!」
と忠告してあげたくなりますよね。
そりゃあ、こんな悪い男、お嫁さんのお父様とお母様が許すはずがありません。
「こんな人が彦星様だなんて、イメージがた落ち…」
と嘆く人もいるでしょう。
私もこちらの伝説を知った時、思わずため息をついてしまいました。
なので、保育園や幼稚園、児童館などで『七夕』の行事の由来を子どもたちに語る時は、こちらの話は用いられないことが多いです。
『むかーし、むかし。
天の神様の娘に、織姫という、布を織るのがたいそう上手な娘がいました。
ある日、織姫は、同じく仕事に熱心な、牛飼いの彦星と結婚しました。
ところが二人は、夫婦になった途端、毎日遊び呆けてしまいます。
娘が新たに布を織ってくれないので、人々の着物は次第にぼろぼろになっていきました。
ツヤツヤした毛並みの牛たちも、全く世話をしてもらえず、やせていきました。
この惨状に怒った神様は、天の川を作り、二人を遠くに離しました。
二人はもとの働き者に戻りましたが、毎日、会えないのをお互いに嘆き悲しんでいます。
神様は同情して、7月7日の七夕の日には、かささぎが天の川にたくさん集まって橋をかけ、二人が会えるようにしてくれましたとさ。』
という、皆さんにおなじみの『七夕』のお話を語ります。
そして
『だから、みんなも遊びほうけたり、なまけたりしたらいけませんよ。』
と伝えます。
同じ『七夕の由来』のお話なのに、どうしてここまで違うのでしょうか。
本当に不思議ですよね。
どうしてお嫁さんは、男の策略が分かっても、まだ好きでいられたのかな?
毎月7日に会えると信じて、何ヶ月も現れない男をずっと待っていた、なんて…
すごく不思議なお話だねぇ。